捺美ちゃんは、週に2、3回訪れた。
そのほとんどは、塾に行く前の数十分と、土曜日の午後だ。
二人の様子を見ていると、捺美ちゃんはがんばって勉強していることがわかるし、ケイタも大学の勉強や就活も真剣に向かっていることがわかっていった。
捺美ちゃんがバイトをやめたのも、勉強のためだ。ダイエットは、それはケイタのため、なんだけどさ。。。
ただでも、一緒にいるときの会話のほとんどは捺美ちゃんの勉強のことだった。
ケイタは、かなり面倒見がいい奴のようだった。
それに、とても親切なんだ。
捺美ちゃんが何かに興味があるようなことを言うと、次に会うときまでにはそのことを調べて必要な資料も印刷してあげているし、何か食べたいときもまずケイタが作ってあげていた。
捺美ちゃんがそのことを気にすると、
「大学入ってからお返ししてもらうよ。」といつも言う。
ケイタもケイタでバイトもあるし、暇じゃないはずなんだが、こいつはいいやつなんだな。。。
あーぁ、俺もこのくらい勉強できたらなぁ。そしたら、もっと捺美ちゃんにいい思いさせてあげられるのに。
「ふうは、お利口だよねー。」
急に捺美ちゃんが言う。
今日の彼女はサラサラした髪の毛がとてもきれいだ。ただ、整髪料の匂いがジャマだな。俺が猫じゃなかったら、そんなこと気にならないんだが。
「そうそう、最近はちゃんと食べるし。ただでも、ちょっと寝すぎだけどな。普通はこの年齢だともっと遊ぶはずなんだって。」
「なんだか、普通の猫と違うよね?私たちの会話もじいっと聴いてるし。目にすごく何かあるような気がする。」
「そうだよなぁ。ふうがうちに来て、、、3週間くらいか。3カ月経って飼い主が見つからなかったらこのまま俺たちのふうになってもらおうかな。そうしたら、盛大にお祝いしような。」
ケイタの声はほんとうに嬉しそうだった。ケイタ、こいつに俺は好かれているんだろうか?
「そうだね!そうなったら嬉しいなぁ。」
あぁ、ほんとに似合いのカップルで悔しいなぁ、ちくしょう。
ケイタはそんなに美男子ってほどでもないが、俺よりはずっと顔がいいし、捺美ちゃんに対して常にレディファーストだし、こないだだって、捺美ちゃんから夜電話かかってきたときもすぐ飛び出していったんだよな。
あのときは急な豪雨で捺美ちゃんに傘がないからって、持っていってあげてたんだ。捺美ちゃんも家族より先にケイタに連絡するんだな。頼れるもんな。
「捺美さ、この鈴どう思う?」
「これね、なんの素材なんだろ?どうして金属なのに風鈴みたいな音がするのかしら。」
「俺さ、今度工学部のやつに見てもらおうかと思うんだよね。」
こ、この鈴か??
そうだ、俺が猫になっちまったあの日も寝ながらこの鈴の音が遠くから聞こえてきたんだよな!
俺だって知りたいよ。(続)
この小説のテーマ曲です。併せてお楽しみください。