「でも、この首輪、外れないんだよ。」
そう、先日からケイタが首輪を外そうとしても、見た目は普通の首輪なのに、なぜか外れないんだ。
これは、どういうことだ?俺は、何に首を絞められている?
「そのへんも、相談したいと思っててさ。」
「そうねぇ、でももし飼い主さんがいたら、首輪に傷があってもいけないよね。」
「もちろんそうさ。ま、今そいつらも忙しいからそんな簡単に見てもらえないけどね。」
「やっぱり、大学って忙しいんだ。」
「うーん。。。人によるのかもしれないけど。俺らは就活がんばらないといけないから。」
「うん、、、私、ジャマだよね。。。」
「そんなこと言ってないだろ、俺は捺美の賢くて素直なところが好きだよ。大学だと、意外といないんだ。」
「ケイタくん。。。」
あ、この雰囲気。
俺は嫌になって窓辺に寄った。今日は土曜の午後。
捺美ちゃんがゆっくりいられる日だ。
「散歩してくるか?悪いな。」
外を歩きながら俺は考えていた。
俺はなぜ猫になったのか。この首輪の意味はなんなのか。あの鈴の音はなんなのか。
動物病院やSNSでは俺の情報は入ってこず(当たり前だが)、予防接種をされただけだった。
ここに来た日以来、あの鈴の音は寝ているときにはほとんど聞こえていた。たまに聞こえないときもある。
その違いもはっきりしない。
ただ、どちらにせよ安眠はできなかった。
他人の家で、こんな姿だということもあるだろうし、鈴の音が耳に焼き付くほど鳴り続けているからかもしれない。
捺美ちゃんの透明感のある声も、人間だった時より、よく聴こえているはずなんだけど、
それよりも鈴の音のほうが大きく鳴り響いているような気がする。