ただ、ここに来て気が付いたことがある。
それは、俺は今まで父子家庭で育って、料理をがんばって料理人になることが夢だったのだが、
二人の会話、特にケイタの様子を見ていると
俺が思っていたがんばりは、独りよがりだったのかな、
ということ。
ケイタもケイタで厳しい家庭で育ったらしい。
勉強ができないことなんて許されない環境で、常に満点を取ってきて当たり前だった、
ということを聞いたときには驚愕した。そんな奴が、ほんとにいるんだな。。。
そうやって、日本を代表する超名門大学の商学部に入ったのか。
高校の同級生は一流国立大学に行っていたり、留学した人もいる。
俺には想像もつかないことだらけだったが、
ただ普段のケイタの生活を見ていると、
俺なんかよりずっと真面目ですごく勉強している。
ほんとに、捺美ちゃんと過ごす時間だけが息抜きに見えた。
俺は勉強が苦手でずっとそれから逃げてきたんだが、
もしかしたら、ちゃんと向き合わなかっただけなのかもしれない。
そう思った。
そう言えば、亡くなった母さんは数学が大得意だったらしい。
「すべては数学につながるのよ」
口癖のように、そう言っていたとか。
だとすると、
俺はその才能を受け継いでいるのかもしれないし、
これまで才能の無駄遣いをしてきたのかもしれないな。
レシピの配合や温度の違いがもたらす材料の変化を読み取ることは得意だったんだが、それ以上のことには使ってなかったんだもんな。
それに、料理もお菓子も、
作られた背景や名前にはいろんな歴史が読み取れる。
となると、
世界史だって無塩、いや無縁じゃないはずだ。
あれ、俺は今まで何をしていたんだ?
『ふうあーゆー』テーマ曲 ~時空の音色~