。。。どうやら、このケイタって男はいいやつのようだ。。。捺美ちゃんが急に俺を連れてきても文句も言わないし、俺に対しても親切に接してくれる。。。しかも、名門大学の学生だろ?
くっそぉ、俺が人間だったとしても、何も敵わないじゃないか。。。捺美ちゃんが好きになる男がいい男なのは嬉しいが、でもあまり嬉しくないぞ。。。
出された牛乳を前にすると、俺はまた心底悲しくなった。
なんで俺はこんな這いつくばって皿を床に置かれて飲まないといけないんだ。。。
亡くなった母さんはテーブルマナーにも厳しかったようで、親父は俺と二人きりになったあともそれだけは俺に躾てくれた。スプーンもなく飲むだなんて、俺は前世でどんな罪を積んだんだ。。。
その様子を見ていたのか、ケイタは
「そっか。。。寂しいんだな。悪かったよ。無理に飲まなくていいよ。あとで、いいもの買ってきてやるからさ。ちょっと待っててくれよ。お前を悲しませると、捺美が悲しがるからな。」
あ、そっか、捺美ちゃん。。。俺が悲しんでいると捺美ちゃんも悲しいのか。。。と、思ったけれど、身体は全く動かなかった。
「いいよ、好きにしてな。なんか、おもちゃになるものないかなー。あ、これがあった。」
ケイタは部屋の奥から何やら毛糸の塊を持ちだした。
「捺美が編み物しようとしてできなかった残りだよ。お前、捺美好きだろ?」
情けないとしか言いようがないのだが、捺美ちゃんの匂いだけが俺を保ってくれるたった一つの精神安定剤だった。
とりあえず毛糸に顔をうずめる。はぁ、なんてことだ。。。
「じゃ、俺買い物行ってくるから。慣れないと思うけど、悪いな。」
俺は一人になった。