指揮者になれるというオーケストラ企画、これのために日々エベレストのような傑作をアレンジし続けているわけですが、
そんな中で「これは絶対無理だから、やりたい人は大勢いるだろうけど絶対やらない」
と思っていたある名曲に
「あれ、これこうすればできるんじゃない?」
と思ってしまい、
結果、その曲を一生懸命勉強して(勉強のためにまずピアノ練習して)
脳内がその作品や作曲家でいっぱいになってしまっているわけであります。
そうすると、何をしていても気になっちゃうんだなぁ~……私の恋するその音楽を書いたその人のことが。
そう、その夜私はとても疲れてしまっており、もうこのまま髪の毛もとかさずに寝入ってしまおうかと思っていました。
が、そこで思い出したのです。
恋するその音楽を書いたその人のことを。
その人は、髪の毛がもじゃもじゃの肖像画で有名で、実際身だしなみだとかいろいろに難があったとも言われていて、その中でも最強の説は
なんとお客様も来る作曲用の部屋のピアノの下にトイレ壺をそのまま置いてあったそうで、それはもうわざわざ想像する必要もないくらい凄まじいことになってしまっていたそうなのです。きっとその人の言い分は、用を足すために別室に出向くのも我が芸術にとってはくだらないことだから、だったんだろう。
そしてその話はその人亡きあと現代の極東日本においてまで知られるほどの威力を発揮してしまっているんだけど、なんてことだろう!
そんなわけで、私は自分が髪の毛もとかさずに就寝してしまうのは芸術性の程度からいってその人がトイレ壺をそこに置いてしまっていることと何ら違いがないのだとその瞬間雷光に打たれたかのように悟り、結果ちゃんとお手入れをして休んだのでした。だって、私がもっと素晴らしくできていたらそれは同程度とならないのかもしれないけれども、私なんかその人の銅像に止まる蠅くらいの芸術性なんだから、せめて髪の毛くらい……!!
この写真は、別日クローズドの演奏会場で友人に隠し撮りされていた髪の毛お手入れの様子。この日はベートーヴェンは弾いてないよ(あっ、その人の名前を言っちゃった!)
そんな、お話しでした。