Notes

『雪』 20200315

昨日の首都圏は雪模様でしたね。雪というより、みぞれか。

そんな中、てくてくと狛江まで出向いて私が行ったのは

 

尺八の三塚幸彦さんがお弟子さんの松村湧太さんと演奏されると知ったから。

 

三塚さんは、以前共演させて頂いたことがあって、その豊かな音色と熱い息遣い、とても素晴らしい演奏をなさる上にお人柄まで温厚で本当に素敵なお方なのだが、三塚さんのところにいらっしゃる松村さんも大変才能豊かな方だと伺っていて、以前からお会いしたかったから。

目の前でお二人の熱演、いくつもの曲を聴かせてもらい、改めて尺八はいい楽器だなぁと思いましたね。日本が世界に誇る音色だと思う。雪の日に聴けた尺八、風のような音色。

 

ちなみに、吹いてらした楽器は三塚さんが開発された金属製の尺八AireedX。竹で作るものと比べて、安定した量産が可能だとか。三塚さんの作る尺八はもともととても吹きやすいことで定評があり、それが更に制作もしやすくなっていくということだそうです。

 

私のように、300年前にストラディヴァリウスが完璧に完成させたヴァイオリンという楽器を弾いている者にはわからないことだけれども、楽器の完成度は奏者には非常に大事というか、それがないとそもそもいい音楽もなかなか奏でられないと思うので、三塚さんの理念には素晴らしいものを感じて帰ってきた。

あ~、そろそろ久しぶりに尺八と弾きたいな~!

 

そんな、今日でした。

『始』 20200312

新しくやることが増えた。

ご覧になって下さっている方もおられるが、数十秒のメロディを収めた《今日の4小節》たる動画。週に3本くらいアップする予定でいます。

それと、個人的に始めているのが、執筆活動を手書きで行うこと。

あと、これは明日から開始予定なのですが週3くらいで朝にランニング。

 

何しろ、この自粛のときにしかできないようなことを徹底的に行わなければ、もったいない。

 

最近気が付いたことに、どうやら私は手を実際に動かしたものでしか骨身にまで入ってこないようだ。何かというと、楽器は手を動かして弾くし、絵も手を動かして描く。私は鉛筆一本で描くのが好きだ。それに比べて、どうも己の執筆活動が自分自身にしっくりきていなかったのだ。

そこで、先日から鉛筆を走らせて紙に記すようになった。そうすると、それまでと違っていろいろなものが立体的に構図として浮かび上がってくる。これだ、構造が見えないと私はなにも作れやしないのだ。

こうなると、想像力も膨らんでくるし、いやぁ楽しい。楽しいんだ。

 

ちなみにランニングを始めるのは、今度6月19日に私とピアニスト松井理恵さんによるサロンコンサートを原宿カーサモーツァルトで開くのだが、その夜はバレリーナに踊ってもらう。で、私も一曲踊りを披露する予定だから、そのためへの身体作りというわけです。

このところ、皆さまもお困りの例の騒動によって私も予定に大幅な変更が生じるなどあり、なかなか日記の更新もできなかったのだが、実はこんな状態でおります。

あとは、多重録音したオリジナル曲をなんとか公開できたらな。新作も一つできたぜ。

 

というわけで、今後も私によってお楽しみ頂けるようコンテンツを複数同時進行で準備しておりますので、お越しになれる方はまず生のコンサートからぜひ足をお運びください。最近のライブハウスはどこも清潔で対策もばっちりしておられます。

そんな、今日でした。

 

開催中止2020.0418ソロコンサート『我儘なソリスタ』

新型コロナウィルス感染拡大防止のため、本公演は無期延期となりました。ご来場予定だったお客様には大変申し訳ありません。代替措置として、本公演で演奏予定だった曲目を中心としたオリジナルCDを作成、通信販売を行います。準備が整い次第ご案内致しますので、今しばらくお待ち下さいませ。

 

 

 

2020年4月18日。ヴァイオリン一本ソロコンサートを開催します。題して『我儘なソリスタ』。

内容は、私アイティがヴァイオリン一本用にアレンジしたクラシック超絶技巧やロックメドレー、即興演奏、オリジナルピアノソロなど、要するにやりたい放題な企画。歌も踊りも自前でやっちゃうヴァイオリニストをとくとご覧あれ。

 

告知動画はこちら

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『決』 20200227

いやもう、大変ですよ。

私がわざわざ申し上げることでもないけれど。既に皆さま大変な状況にいらっしゃることと存じます。早く安心したいですね。

 

私は私で予定していた3/12『幻楽夜話』は中止としたし、とても残念でおります。

 

で、決めたことがある。

 

まるまる一か月近く予定が空いたから、この期間に作って作って作る、ということ。

 

先週、公演の中止を決めてから、もろもろの対応を行い、ふと気が付いたらたくさんのものが手から生まれようとしていた。ピアノに向かうといくらでも出てきそうだった。初めての体験だった。

そっか、弾くものがたくさんあるときには出てこないんだな。

そう思った。

 

今の活動を始めてからおよそ一年、作曲や執筆もなんとか手掛けていたけれど、ヴァイオリン一本とか路上とかパガニーニとかやっていると心身ともにそっちで忙しくてなかなか創作までは向かえない。この数日、それが一気に解き放たれた感じがした。だから、これから表に出られない期間はすぐに創作に向かう、そういう切り替えができるようになる自分でいたい。

というわけで、創作作品は、仕上がり次第お目にかけたいなと思っておりますので、ぜひご期待くださいませ!その他にもいろいろと準備中だがね!4/18ソロコンサート『我儘なソリスタ』はぜひお越しください!

 

写真は、こんな大事になってしまうしばらく前の生中と私。

そんな、今日でした。

 

『馬』 20200213

馬と言えば、擦弦楽器の弓の毛は馬のしっぽで出来ている。

天然のを、漂白してあるんです。あまりにぼろぼろなのは取り除いて。これを弦にこすりつけて弾くんだから、弾いているうちに摩耗してくる。それをたまに交換するのを毛替えと言います。

あと、ラヴェルのツィガーヌという曲があるが(ツィゴイネルワイゼンと同じくジプシー調の超絶ヴァイオリン曲で実はツィゴイネルワイゼンを遥かにしのぐ難しさ)これの冒頭なんか、私のイメージは「馬みたいに弾く」だ。馬が鳴くときのあの勇ましさ、そして野生。そんな感じがする。

 

てなわけで

 

今朝ははるばる、横浜馬車道まで出かけて参りました。

これについては、のちのちおもろいものを発表する準備に邁進しておるので、今しばらくお待ち頂きたいのだが、

 

同行メンバーは、津原泰水。そしてピアノ藤井麻理。

 

先生と麻理ちゃんと3人で朝っぱらから楽しいコトやってきたぜ!!

 

コトが済んだあとは、3人で気持ちがいいお喋り。先生の話題の豊富なこと!普通じゃないね。さすが次々と引き込まれる作品を出されるはずだ。それにしても、先生の語り口は愉しい。柔らかい声に、優しい眼差し。まるでずっと浸かっていたい変ロ長調のフラット2つの幸せ。

 

写真は、コト済んだあとの間抜けな私の背中と佇む先生。撮影は麻理ちゃんさ。

そんな、今日でした。

 

私以外は2人とも先生。文学と音楽が出会うコンサート『幻楽夜話』~超絶ヴァイオリンが再現する名作文学に流れる調べ~

『朝』 20200203

3/12『幻楽夜話』のためのリハーサルが数日後に決まった。

今回は、ヴァイオリンとピアノのために書かれた曲ではない、オーケストラ作品なども演奏するため、リハーサル前の打ち合わせが必要で、それ自体音を出しながらやる、というものだ。

そして、私はあることに震撼している。

 

それは、そのリハーサルが

 

早朝に行われる、ということ。なんてことなの。

 

ここで言う早朝とは、極めて個人に由来する体感的な尺度による表現であって、一般的には決して早朝ではない。だって、朝9時からだもん。でも、だって、そうしたら私、7時半くらいに電車乗ってかないといけない。

なぜならば、午前中という時間帯に混んだ急行電車で立っていると貧血で倒れてしまうという習性の持ち主なのだ、倒れちゃうと回復までおよそ2時間はかかる。これは今までの都会生活で唯一学んだ護身術でもあって、私はいくつもの駅で駅員さんの仮眠室にお世話になってきた。だから早めに出て各駅停車の電車に乗らなければいけない。

 

今日、お昼ご飯を作りながらこのことに思いを馳せ、ふと思い出した。

私、そういや高校時代はゼロ限のために6時起きで学校行ってたじゃない!(ゼロ限とは、1時間目の前に行われる授業であって、7時40分からスタートする。)だから、その気になったら6時台にだって起きられるじゃん!

即、別の声が聴こえる。

馬鹿かお前は!!その分、学校に着いてからしこたま授業中に寝ていただろうが!!お前はリハーサル中に寝るつもりか!!この馬鹿たれが!!学校には毎日5~10分遅刻していただろうが!!己のだらしなさを葬ったつもりでいるのか!!

 

そうだ、私ゼロ限に定時に行ったことなんてたぶん3回くらいしかないし、着いたら寝ちゃうし、それで立たされて、立ったままでも寝ちゃって辛かったんだ。立って寝るって、辛いんですよ皆さん、やらないほうがいいよ。

 

そして、くだんの懸念へと戻る。こうして、アイティの悩みはループする。

写真は、練習のお供のバランスボールで怯える私。

そんな、今日でした。

『左』 20200202

3/12『幻楽夜話』の準備をしている。

内田百閒が書いた『サラサーテの盤』には、サラサーテの自演レコードのツィゴイネルワイゼンの演奏が登場するのだが、

まぁ、このサラサーテという人の音楽には、しばしば左手ピチカートというものが出てくる。

 

で、この左手ピチカート。

 

正直、苦手なんだよね。

 

指の力が強くないので、弦を押さえたままはじく、というのがなかなか要領が得られにくい。特に、こういうところは曲のスピードも速いですしね。

 

で、私が開発したやり方は

 

①直前に弾く音の左指を押さえる力は極力弱く、音の響きは右手の運動でだけ出し、且つ、右手は強めに弓を押さえる。

②3、4の指と同時に押さえていた1の指も弦から離す。(こうすることで左手の力をできるだけ楽に使えるようにする。)

③ピチカートが終わった瞬間に左指はしっかり次の音を押さえる。

 

こうすると、私なんかでもサラサーテの左手ピチカートが形になってくる。

 

ね?音楽は解説で読んだってよくわからないでしょ?というわけで、実演をばご覧あそばせ。ご予約はこちらでございます。3/12『幻楽夜話』

 

そんな、今日でした。写真は、そのピチカートの指。

『浸』 20200121

最近は忙しくてほとんどやっていないが、昔から弾けない曲のスコアを音源聴きながら分析したり、弾けもしないピアノ曲をさわることが好きだ。

オケの譜面とか。カルテットとか。

ブラームスのカルテットなんてスコア見ているとその緻密さと研ぎ澄まされた緊張感からのゆったりとした音楽の造り込まれた構成に、とても同じ人間の技だとは思えない、と感じる。

モーツァルトは、ピアノ協奏曲なんか案外楽しいのですよ。この人のピアノ協奏曲は、彼における一つのジャンルと化しているので、オケとピアノの具合が素晴らしくバランスが整っていない。単純なソロと伴奏じゃあないからね。そこから生まれる妙というのがこの上なく美しい。

 

そんなふうにしていると時間はあっという間。

 

ただ、でもこうして弾けない曲にふれて、弾けるものは少しでも弾いてみて、そうすると何がしか自分の中にいろんな栄養素が入ってくるかのようで、それはときに疲れる。私はしょっちゅう湯あたりしている。食べてもないのに、いろんな人の成分が入ってくるのだものな。

 

読書もそうだな、少しでも手に取って読もうとしているうちに知らずのうちに私の中には文学が入ってくる、きっと。さしずめ、毎日種類の違う温泉に浸かっているかのようだ、この人生。

 

写真は、習慣にしている里山歩きで見かけた山茶花の瑞々しさに心奪われて。

そんな、今日でした。

『雪』 20200119

昨日は、神田ヴァイオリン娘活動で知り合った方に連れられて、神田の深部に入ってきた。

神田の老舗インドカレー店「葡萄舎」だ。ぶどうしゃ、と書いてぶどうやと読む。

 

そう、カレー屋だ。

 

年季の入った店内の様子。使い込まれた古い木製のカウンターに木のテーブル。壁が薄汚れているのは、煙草のせいか。

間違いなく、一人では入れない店だ。

 

オールバックの髪の毛を後ろで一括りにしたオーナーは、1960年代にヨーロッパからインドを5年間も旅したらしい。音楽を愛し、古い時代のスピーカーから流れる音は店の木と反射し柔らかい。店の雰囲気もその音のようだ。

だって、葡萄舎なんて店の名前なのに、

メインはインドカレーだし、

夜のメニューといえば、しめ鯖、煮凝り、さつま揚げ。

 

もちろん、カレーもあるしベジタリアンも食べにくるという仕上がりは、びっくりするくらい美味しかった(私には)。

 

あと、どれもこれも大盛りたっぷり。

 

古い時代のお話しをうかがったり、神田の様子を教えてもらったり。どれもこれも許される懐の深い音と店。

神田ヴァイオリン娘も少し神田のエキスが入ってきたかも。

 

ここでライブやるときは、お知らせします。

そんな、雪の夜でした。

終演『Paganini Meetings.4』

2020年1月13日。まだ「明けましておめでとうございます」と言いたい気分の今日、我らがオールパガニーニプログラム『Paganini Meetings 4』無事終演しました。お越しのお客様方、ありがとうございました。

 

今回の曲目。順番に

 

ソナタ・コンチェルタータ

カプリス24番(Vn)

ナポレオン

ソナタ3番、27番(Gt)

43の気まぐれより8番(Gt)

バルカバ変奏曲よりムタ3番

チェントーネソナタ4番

 

このうち、かっこで楽器名を記載しているものはそれぞれのソロ。

 

いやぁ、今回のプログラムはきつかった。ナポレオンという曲が、ヴァイオリンのG線一本で弾くために書かれているのですが、それが恐ろしく難しくて。パガニーニのG線だけの曲というと「モーゼ幻想曲」というのが有名なのですが、そっちのほうがずっと簡単に思えた。凄まじく高いハーモニクスがバンバン出てくるんだもの。こんなハーモニクスが存在していただなんて。そんな知らなかったことまで出てくる曲。これは身体にこたえる。

それと以前から取り組んでいるバルカバ変奏曲というのは、超名曲カプリス24番と同じ時期に書かれた、ヴァイオリンとギターの2重奏曲でこれもカプリスのような超絶技巧バンバン。特に今回の3番は難しかった~。

そう、今回は私と富川せんせの間で、とても音楽的とは言えないセリフが飛び交っていた。例えば難しいからって「愚痴は言わない」とか。

 

あとは、

「そこのリズムどうなってるの。え、そんな……不愉快極まりない」

 

不愉快極まりない。

 

音楽に対して出てくるセリフとは思えないね。私の「身体にこたえる」もそうだけど。

 

そのくらい、奇妙で変てこりんで、他の曲ではやらなかったアイディアを詰め込んでいるんだよなぁ。

 

そう、思うとパガニーニも可愛いやつかも。

 

しかし、それにしても今回のこれで、私の左顎下にヴァイオリニスト特有の痣ができたのは明確な事実ですわよ。痣、なかったんだけどな。

 

ちなみに、次回は5月17日のお昼です。だいぶパガニーニを掴んできた我ら。そろそろ決めの演奏をお目見えしましょう。

 

写真は、終演後にとにかくケーキで糖分補給したい私。向かいにはせんせがいた。