ムーア人

『夜の工場地帯(仮)』制作について

先日、新曲『夜の工場地帯(仮)』を発表した。

 

2分弱の短い小品だが、自分としてはわりと気に入っている。端的にまとまっていると思う。

 

この曲は、元々は昨年12月、紀尾井町サロンホールで開かれた戦友とみーの木曜コンサートにおいて演奏されたタレガというクラシックギター界では有名な作曲家の作品で印象的だったコード進行を用いている。

それは、コンサート前半に演奏され、強い足取りのコード進行に心惹かれ、途中の休憩時間にその場にいた周りの人たちに「これはどういうコード進行ですか?」と尋ねて回ったのだ。

その中で、多功さんという方がこの進行を解析して教えて下さった。この方は、とみーのお弟子さんであり、ジャズギタリストでもある。(とても親切で、お酒を作るのもうまい。私は彼にひたすらビールをサーバーから注いでもらったこともある。※しかも細身の美形。)

 

話しが逸れたが、そのおよそ2週間後。原宿カーサ・モーツァルトで開いた「虚飾遊戯」というコンサートで私は覚えたばかりのこの進行を用いて『朝もやの中へ』という曲を発表した。これもとても評判が良かった。当たり前だ。タレガの進行がとても格好いいからだ。

 

とみーいわく、この進行はムーア人の行進に使われたらしい。ムーア人とは、古い時代にヨーロッパから見てエジプトあたりのイスラム教徒を指した言いかただと思う。私の公式愛読書『ドン・キホーテ』にも頻繁に登場する。

なんで、とみーがムーア人のことにまで詳しいのか、私にはさっぱりわからない。大学の先生だからなのか、あまりに知識が幅広いのではないか。

 

『朝もやの中へ』は、ギターの響きをイメージして書いたのだった。ギターでないと出ることはない音の消え方。それが私は最高に好きだ。

 

今回も、格好いい曲を書きたいと思って、まず思い浮かんだのはやはりこの進行。私はギターは弾けない。だから違うリズムで違うメロディで運ぶしかない。

苦肉の策で浮かんだメロディは強すぎた。そこから1週間以上は続きが出てこなかった。だが、この進行に対して甘いメロディはダメだ。あの当時だってイスラム教とキリスト教の対立は激しかった。その進行を用いるからには、それなりの理由が見えないと。

 

タイトルは、後付けだ。曲を作りながら、これはあまり人の温度が感じられないと思った。それで制作の途中で付けた。仮でもタイトルが付くと、少し方向性が見える。それなら、よりこの無機質な性格で進もう、そう思った。

 

熱で具合が悪い日なんかもあったのだが、熱にうなされる明け方、うっすらと(あ。。。もっとこういこう。。。)などと思っていて、なぜかその記憶が日中にも残っていたからそれで試してみた。そうすると案外曲がまとまってきた。不思議なものだ。

 

一つの作品ができあがるまでの流れ。それも面白みがあるかもしれない、と思いこのように文章にしてみました。よろしければ、曲をお楽しみいただければ幸いです。

 

写真は、いつもメモ程度しか残さない私の楽譜。

『魚』 2019.0725

皆さまこんばんは。田中幾子でございます。

 

今日は、朝は山へ行き、午後は新曲の続きと動画撮影、それからパガニーニの練習をして、と大変充実した一日だった。

どのくらい充実していたかというと、それは本日の写真をご覧いただけばおわかりのとおり。

夕食に頂きものの日本酒とほっけの開き。

全ては、ここに集約される。至福でしかない。

 

そういう一日であった。

 

新曲は、ちょっとかっこいいものを書きたいと思い、このところ取り組んでいたものです。出だしのコード進行は、前にギターのとみーが弾いていたタレガという作曲家の作品に使われていたもの。とみーいわく、ムーア人の行進のコード進行らしい。こういうことをさらっと説明できるあたりは、あいつは大学の先生っぽい。

 

ほっけは、私は北海道出身の母をもち佐賀で生まれ育ったから、お魚好きなのです。お魚がないと生きていけない。美味しかった。

 

そんな、今日でした。唐突な終わり方で申し訳ない。

新曲も演奏予定。ソロコンサート。ヴァイオリン超絶技巧無伴奏、オリジナル曲、即興演奏など。次回は8月25日エムズカンティーナにて。『青の時代 vol.4』

オールパガニーニプログラムシリーズ『パガニーニ・ミーティングス vol.2』