超絶技巧

終演『Paganini Meetings.4』

2020年1月13日。まだ「明けましておめでとうございます」と言いたい気分の今日、我らがオールパガニーニプログラム『Paganini Meetings 4』無事終演しました。お越しのお客様方、ありがとうございました。

 

今回の曲目。順番に

 

ソナタ・コンチェルタータ

カプリス24番(Vn)

ナポレオン

ソナタ3番、27番(Gt)

43の気まぐれより8番(Gt)

バルカバ変奏曲よりムタ3番

チェントーネソナタ4番

 

このうち、かっこで楽器名を記載しているものはそれぞれのソロ。

 

いやぁ、今回のプログラムはきつかった。ナポレオンという曲が、ヴァイオリンのG線一本で弾くために書かれているのですが、それが恐ろしく難しくて。パガニーニのG線だけの曲というと「モーゼ幻想曲」というのが有名なのですが、そっちのほうがずっと簡単に思えた。凄まじく高いハーモニクスがバンバン出てくるんだもの。こんなハーモニクスが存在していただなんて。そんな知らなかったことまで出てくる曲。これは身体にこたえる。

それと以前から取り組んでいるバルカバ変奏曲というのは、超名曲カプリス24番と同じ時期に書かれた、ヴァイオリンとギターの2重奏曲でこれもカプリスのような超絶技巧バンバン。特に今回の3番は難しかった~。

そう、今回は私と富川せんせの間で、とても音楽的とは言えないセリフが飛び交っていた。例えば難しいからって「愚痴は言わない」とか。

 

あとは、

「そこのリズムどうなってるの。え、そんな……不愉快極まりない」

 

不愉快極まりない。

 

音楽に対して出てくるセリフとは思えないね。私の「身体にこたえる」もそうだけど。

 

そのくらい、奇妙で変てこりんで、他の曲ではやらなかったアイディアを詰め込んでいるんだよなぁ。

 

そう、思うとパガニーニも可愛いやつかも。

 

しかし、それにしても今回のこれで、私の左顎下にヴァイオリニスト特有の痣ができたのは明確な事実ですわよ。痣、なかったんだけどな。

 

ちなみに、次回は5月17日のお昼です。だいぶパガニーニを掴んできた我ら。そろそろ決めの演奏をお目見えしましょう。

 

写真は、終演後にとにかくケーキで糖分補給したい私。向かいにはせんせがいた。

『二』 2020.0109

去年から始めたオールパガニーニコンサート『パガニーニ・ミーティングス』も今度で4回目だ。こらえは、元々はギターの富川せんせと何かコンサートやろうと話していたときに、

「最近は、一人の作曲家に絞ってやるものが興味持たれやすいよ」

「え、じゃあパガニーニ?曲やまほどあるしね」

みたいなノリで始めたのだ。それまでは、ピアソラとかサラサーテのスペイン民謡とかギターの古典やってた。だから、正直そこまでパガニーニに愛着があるとか、憧れていたとか、そういう気持ちは私はあまりなかった。ヴァイオリニスト的には、ちゃんと弾けて当たり前の作曲家なんだけどさ、好きとか嫌いとかで言っちゃうとやっぱベートーヴェンは死ぬほど凄いと思うし、ラヴェルなんか永遠の憧れ、砂浜の白ワンピが似合う清楚なお姉さんのような見た事のない憧れ感だよな。

 

が、おかげさまでシリーズとしてひたすらやっていくと、

 

はーっ、やっぱ名人ってすごいわ。

 

とひれ伏したい気分となるね、さすがだわ。歴史に残る人ってすごい。やっぱすごい。どう考えてもすごい。ヴァイオリンってこんなこともできたの、ってたくさん思う。はぅあ~すごいわ。

とか思いながらの今日のリハ。思い起こしてみれば、富川せんせと出会ったのって2年前の今頃か。目黒のバーValseだった。あれから結構な本番やってきたな。去年も一番共演回数が多かったし、人生どこでどう出会えるかわかんないもんだな。

 

写真は、富川せんせとこにあったおもちゃの三味線。これ弾いてもらってげらげら笑ってた私。

そんな、今日でした。

『年』 2019.1230

間もなく2019年も終わろうとしている。

つい先日、私はふと今年を振り返る気分となって考えてみた。

 

そういえば、今年は今までと違って新しいことをいろいろと始めたな。

今、皆さんにお見せしているI・T 田中幾子は、今年になってからのもので、それまではこういったことは一切していなかった。

 

オール無伴奏のソロコンサート、ライブハウス、路上、パガニーニシリーズ。今年の後半は、ダンサーや小説家の先生にも知己を得、新しい人間関係も拡がった。

 

1月から渋谷の La.mama でオープニングアクト出演として特別に出して頂いたことは、前例がないらしい。同じように、二子玉川の Gemini Theater や、神田SHOJIMARU にも出して頂いた。最近になってから、ロックのギタリストの方に「そんな話し、聞いたことがないですよ」と、言われた。

3月から駒沢大学エムズカンティーナで始めたソロコンサート『青の時代』。これは、無伴奏でクラシックの名曲からロックまで弾いちゃう、ピアノも弾くし歌も歌う、あまつさえ踊っちゃう、という完全ソロのコンサートで、目玉はお客様にその場でお題を出して頂き、即興でメロディ作って弾くアドリブリクエストかな。

それから、オールパガニーニコンサート『Paganini Meetings』。これは、ヴァイオリニストでギターとパガニーニをやり続ける人がいないから、ギタリスト富川せんせと始めたんだ。ポイントはやり続けるということで、私は彼とすごく気が合うし、弾いていて楽しい。そんなふうに思える仲間は滅多にいないからこんな無謀なこともやろう!と思えたんだ。

 

7月に、神田の海老原商店と出会って、そこでパフォーマンスをされているコンテンポラリーダンサーの青木尚哉さんと彼が率いるグループの皆さんにも、生演奏で踊って頂いたし、9月には作家の津原泰水先生と親しくなれて、先生のライブにゲストで呼んで頂いたり、来年3月12日には先生も交えて文学と音楽をテーマにしたコンサート『幻樂夜話』も開催します。詳細近日公開、少々お待ち下さいませ。当たり前のように書いているけれど、コンテンポラリーで有名な青木さんのダンスはすごい説得力があって誰もを唸らせるし、津原泰水先生の文章は作品ごとに全く違っていて、長年商業作家をされていることの凄さは身に滲みる。

 

そういえば、神田ヴァイオリン娘と称して、神田界隈で路上演奏を始めたのも9月だ。ここからかなり忙しくなっちゃって2月から始めた、この漢字日記の更新頻度も減ったんだ。

11月は、私的今年の総集編『美会夜会』。ピアノとのデュオでできる、最高に格好いい音楽をお届けしたくて。できたかな?どうだろう。

この他、プライベートで演奏したものを入れたらかなりあるなぁ。池袋のジャズクラブ、ホットペッパーでも弾かせてもらったな、あの日は「イパネマの娘」が大好評だったな。ポップスのサポートでヴァイオリンとピアノの両方を担当させてもらったりもしたな。

 

恥ずかしながら、自前の小説を堂々と公開したり。これは来年早々に改訂予定です。改訂したい、要するに書き直したい!もっと面白くいい内容にしたい!あと、曲もレコーディングして聴いてもらいたい!です。

 

来年は、どんな年になるかな。

 

何ができるか、わからないけれど。今の100倍上手くなっていいことや面白いこと素敵なこと満載にできるように、精進して参ります。

 

それもこれも、I・T を楽しんで下さる皆さまのおかげ、もっとこうしたほうがいいんじゃないって助言して下さるおかげ。

 

来年も、どうぞご期待下さいませ。

『弓』 2019.12.29

擦弦楽器の魅力の最たるものは、弓によるものだと思っていて、

ヴァイオリンやチェロに惹かれる人というのは、弓が好きなのだろう、と思っている。

 

そう、擦弦楽器とは、弓で弾く弦楽器の総称です。どうも、擦弦楽器界隈の住民の多くは、弦楽器というとヴァイオリン、ヴィオラ、チェロそしてコントラバスをイメージすることが多いように見受けられるのだが、ギターとしばしば共演していると、会話の端々で弦楽器という言葉を擦弦楽器に置き換えたほうがいいような気がしてくる。

 

弓というのは不思議な道具で、

弓矢の名人のように、この楽器としての弓を巧みに操ることができたらどんなにいいだろう、と小さいころからずっと思っていた。

 

弓の動きは、気持ちがいい。

しなり、楽器を響かせる。空間を音で満たし、人々の心を震わせる。それは、弓だから出る音だろうな。そう思う。

同時に、これは飛び跳ねることだってできるんだ。弦の上を自在に跳ねて、勝手にキラキラした音をいくらでも見せつけてくれる、すごくいい道具だ、不思議だ。なんでそんなことができるんだろう。

 

この最高に気持ちがいい仲間。この最近また様々なところで演奏させてもらったおかげで、私はまた彼と仲良くなった。

 

あぁ、楽しい。楽しいよ。

 

写真は、今日彼と語らったパガニーニの技巧曲。最初から最後までG線で演奏します。

そんな、今日でした。

オールパガニーニシリーズ 2020年1月13日『Paganini・Meetings4』

『奮』 2019.1023

昨日は『パガニーニ・ミーティングス』の3回目だった。

3回目だし、今までしていないことをやろうと、私が決めたのは『24のカプリス』から2曲弾くこと。

昨日は、13番と24番を演奏した。

 

13番は、今まであまり弾いたことがない。(というか、カプリス全体そうなんだけれど。)でも、出だしの柔らかな曲調と中間部の激しさのコントラストが好きなんだよな。

あと、練習していて気が付いたのは、この13番は私のテクニックに合っていること。だから、弾きやすい。

 

パガニーニの、ギターとのデュオ作品において言えることは、簡単そうな曲が弾きやすいとは限らないということだ。なんかリズムが変なところに来たりする。

それよりも、この13番のほうがずっとすんなりと自分の中に入ってくる。超絶技巧曲なんだけれどもね。

 

しかし、このところ路上演奏も始めたせいなのか、一人で弾くときの自分のテンションが手に負えないほどだ。高すぎる。心拍数はまるで全力疾走しているかのようで、実際にはそこまでではないのであろうが、体感的にはそこまでいっている。

だから、昨日もカプリス2曲弾き終えたあとはガクッときてしまっていた。

お客様には、「悪魔のようなパガニーニ」を感じて頂けたようで何より。

 

それと、昨日の発見は舞台上でとみーを先生、と呼び始めたこと。なんか、自然にそうなったんだよね。

そんな、昨日でした。

2019年の集大成!11月24日「かっこいい曲しかやらない」ヴァイオリン・ピアノデュオ『美会夜会』 原宿カーサ・モーツァルトにて。

『技』 2019.1021

明日はオールパガニーニプログラム『パガニーニ・ミーティングス』の3回目だ。

パガニーニ、ずっと前は超絶技巧なんてのはただの見世物で音楽的にあまり意味はない、練習としては必要だけれどもわざわざ披露するようなものじゃあない。そんなふうに考えていたんだよな。

 

でも、一昨年に今の楽器になってから考えが変わった。

 

考えてみれば、それまでの楽器は音大にも入れないくらいのレベルのものでピチカートやフラジオレットはとても鳴りが悪い。上手いとか下手じゃあないのだ。道具としての楽器の造り。このあたりの事情は、ヴァイオリニストでないと理解しにくいかもしれないのだけれど、名手が名器を使うのは当たり前のことだな、と思えてくる。

 

たまにテレビで安価な楽器と名器を比べるような企画がされているけれど、

 

安価な楽器で一晩のリサイタルができるのだろうか。豊潤な音色、艶やかさに華やかさ、ときにはゾクッとするようなささやき、息遣いのような音、よく調整されたグランドピアノと演奏するならば余計に楽器のポテンシャルが必要となるだろうし、楽器の値段とはそのポテンシャルについていると言えると思う。

 

今の楽器になってから、バッハを人前で弾くようになり、イザイもやりパガニーニ。。。とヴァイオリニストにとって重要なものに取り組めるようになったから、やはり楽器と音楽は切り離せないものだな、と思う。

パガニーニ、もっとがんばろう。

 

そんな、今日でした。

2019年の集大成!11月24日「かっこいい曲しかやらない」ヴァイオリン・ピアノデュオ『美会夜会』 原宿カーサ・モーツァルトにて。

 

オールパガニーニシリーズ 10月22日『パガニーニ・ミーティングス vol.3』

演奏動画

『減』 2019.1014

最近、いろいろな人と出会うことが多くてとても楽しい。

7月に、たまたま神田須田町の『海老原商店』前を通りかかってオーナーの海老原義也さんと親しくなり、およそ1週間後にはそこで開かれたコンテンポラリーダンスイベント「エビラボ」でバッハのシャコンヌを弾き、ダンサーたちに踊って頂いた。

コンテンポラリーダンサーさんたちは、みな元々はクラシックバレエ出身だという。実際、そばで拝見していても立ち居振舞いなんかも美しいのだ。もちろん、肉体そのものも。

そんなわけで、長いことバレエをやっていなかった私のバレエ熱が燃え上がり、そこからおうちでバレエ動画を見ながら練習する、というおうちバレエを始めることとなった。

 

そうするとですね、あのですね

血のめぐりが良くなるのか、

 

酒が呑めなくなった。

 

正確には、これまでよりも酒量が必要ではなくなってきた、というか。

 

弱いものを、ちびちびやれば十分。これまでの大量の酒は、一体私のどこに消えていたのだ?と自分でも謎めいた人体の不思議を感じるが、

特に、いい動画を見つけて毎日始めた9月からは減った。

 

いいことですよね?

 

いい人に巡り合い、酒の量は減る。

 

とはいえ、呑まない人生はやってこないだろうなと家系を思いながら、夜は更ける。

そんな、今日でした。

 

写真は、先月の「エビラボ」の様子。

2019年の集大成!11月24日「かっこいい曲しかやらない」ヴァイオリン・ピアノデュオ『美会夜会』 原宿カーサ・モーツァルトにて。

 

オールパガニーニシリーズ 10月22日『パガニーニ・ミーティングス vol.3』

 

『数』 2019.1011

子どもの頃から活字が好きだ。

主に、日本語が好みで次にアルファベットだろうか。数字はそうでもない。

そう、数学者の娘のくせに、数字には全くと言っていいほど愛着がわかないのだ。

 

なんのイメージもないのかというと、そうでもなくて、

2や4といった偶数には柔らかさを感じるし、5のバランス感、13の怖さ、17となると逆に面白さを感じる。

 

こんなふうにして、見た目から受ける印象というものが、そもそも私がその分野を好きになるかどうかというところにおいて重要となってくるため、

 

このイメージと、いわゆる数式というもので行わないといけない事柄の差異がとても気になってしまう。

何をやっているのか、意味がわからなくなってきてしまうのだ。

 

漢字だったならば、漢字なら、見た目や読みと文中においての役割の相関性が理解できるのだが、

数字からは、それが得られない。

 

そういえば、高校時代は数学の試験で英語並のレベルに丸暗記したときだけ100点中80点だったな。英語の30倍くらい時間がかかってめんどくさいからその一度でやめたんだった。

 

でも、でもね!

演奏のときには数えてるから!ひたすらカウントしてますから!

 

 

そんな、今日でした。写真は今日のお出かけ先。

2019年の集大成!11月24日「かっこいい曲しかやらない」ヴァイオリン・ピアノデュオ『美会夜会』 原宿カーサ・モーツァルトにて。

 

オールパガニーニシリーズ 10月22日『パガニーニ・ミーティングス vol.3』

『田』 2019.1009

今日は山に行ってきた。

山といっても、私が通うそこはいわゆる里山である。だから、登山ではなく散歩の延長のようなものだ。

 

で、今日は気持ちがいい快晴であったので、ゆっくりと歩き回りながら自分でこしらえたサンドイッチを食べるということまでしてきた。

 

それにしても、過去の偉大な作曲家たちは大自然の中を散歩することで霊感を得て創作していたそうなのですが、あれって天才でないと霊感は降りてこないですよね。

この春から多ければ週に数回は山歩きに勤しむ私であるが、山の自然から何か創作のタネを感じたことはないうえに、これからもそれはないだろうな、と断言できてしまう。

 

なぜなら、

 

山歩きしながら、近隣の田んぼでとれたお米は美味しいだろうな~とか、里芋の葉っぱがずいぶん大きくなったから、ここらでとれる里芋はさぞかし立派だろうな、煮物にしたらずいぶんと美味しいんじゃないかしらとか、この木の栗は甘いのかしらとか、自然の中で飲む三ツ矢サイダーは最高に美味しいな~

とか、そんなことしか考えてやしないのだ。

 

今日も、歩きながらお昼に食べるサンドイッチが楽しみで仕方なかった。。。

 

そんな、今日でした。

2019年の集大成!11月24日「かっこいい曲しかやらない」ヴァイオリン・ピアノデュオ『美会夜会』 原宿カーサ・モーツァルトにて。

 

オールパガニーニシリーズ 10月22日『パガニーニ・ミーティングス vol.3』

『湊』 2019.1004

昨日は、個人的な用事で半日ほど神田のあたりにいた。

帰りも遅くなったので、たいしたこともせず寝入ってしまったのだが、

 

今日も今日とて、

 

たいしたことは、していない。

 

何をやったかな、山には行った。私の行く山には、まだ蝉が鳴いている。彼らは、一体いつまで鳴いているのだろう。

こおろぎを、初めて現物を見た。今まで鳴き声しか知らなかったのだ。

 

田んぼの収獲の様子を愛でながら、うまい空気を吸う。

 

練習なんかもしたのだけれども、それ以上に最近楽しくて仕方がないのが読書であって、隙あらば本を読んでしまう。

今日、新鮮な発見があったのは湊かなえさんの作品。恥ずかしながら、今まで一度も読んだことがなかったのだ。

これは、私には大きな驚きだから、もうちょっと読み返そう。

端的に言うと、男性の描写がうまかった。私にはそう思えた。

 

誤解を恐れずに言うと、女性的な作品があまり得意ではなくて、マンガで言えば戦闘シーンがバンバンあるような熱い少年マンガが好みなので、どうも小説にもそれを求めてしまうようなのですが、

今回の作品は、恋愛ものなのに、面白かった。

 

小説面白い。小説面白いよ。みんなもっと小説読んだほうがいいよ。

 

そんな、今日でした。

2019年の集大成!11月24日「かっこいい曲しかやらない」ヴァイオリン・ピアノデュオ『美会夜会』 原宿カーサ・モーツァルトにて。

 

オールパガニーニシリーズ 10月22日『パガニーニ・ミーティングス vol.3』

演奏動画