パガニーニの呪文

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クラシックギタリスト富川勝智(以下とみー)とオールパガニーニという難行苦行コンサート『パガニーニ・ミーティングス』も今度で3回目である。詳細はこちら10月22日『パガニーニ・ミーティングス vol.3』

上記のリンク先でも言及していることだが、このパガニーニという人は、悪魔的な技巧という性質の他、言葉の使い方のセンスがどこかおかしい。

いや、そんなこと言ったらお前だってどうなんだよ。

そんな声が聞こえてきそうである。実際私は日々駄文をインターネット上にまき散らしているわけで、それについては批判も受け入れる所存であるわけなのだが、

それにしても、彼はちょっとおかしい。

 

以下、専門的な内容ともなるのですが、できる限り読みやすいように説明するのでお付き合い頂きたい。

 

例えば、「ソナタ」という言葉がある。

ベートーヴェンのピアノソナタ『月光』だとか。ヴァイオリニストとしては、ベートーヴェンの『スプリング・ソナタ』も忘れられたくない。ソナタの小さいものとして「ソナチネ」という言葉もあるが、ピアノを習った人なら覚えがある言葉だと思う。

クラシック音楽の言語はイタリア語が使われることが多い。この「ソナタ」の語源は元々はソナーレという言葉。「楽器を弾く、響く」という意味から来ている。

「カンタービレ」って、お聞きになったことがあるだろう。あれは「歌うことができる、歌いやすい」というのが元々の意味で、これは楽器ではなくて歌のほうの言葉なのです。

 

で、「ソナタ」というと楽器を奏でるという意味から、

楽器は歌よりも、長い時間演奏することもしやすいからなのか、いくつかのパートから成り立つ組曲のような作りの作品が書かれるようになって、

組曲の中身がどんどん洗練されていき、

モーツァルトののち、ベートーヴェンによって完璧なものとなった。

 

というのが、ざっくりとした「ソナタ」の説明でございます。

 

ちなみに、「ソナタ」というのと「ソナタ形式」というのはまた違う。ややこしくて申し訳ないのだが、「ソナタ」は上記の通り。

 

「ソナタ形式」は、乱暴にいうと『きらきら星』のメロディラインのようなものがもっと更に複雑になり最後に締めがあり、かっこよく書かれたもの、とも言える。

『きらきら星』。メロディ2つ出てくるのです。ドドソソララソー、と始まる出だしと真ん中あたりのソソファファミミレー(2回)、でまた出だしのドドソソララソーに戻る。

こういうものをクラシック音楽用語では「3部形式」と呼ぶのですが、「ソナタ形式」は、最初のメロディはその曲の主人公として華々しく登場し、それについてくる性格のいい従士、2人で旅に出たら「やぁやぁ我こそは!」と挑戦してくる隣村の暴れん坊息子、やり合ったりしているうちに空は雨だ、雷も鳴ってくる、びしょ濡れじゃないか!と雨宿り。そんなこんなでまた2人で歩こうとしてたら、こっそりつけていたバカ息子現れ(あ、暴れん坊だった。)またやり合いつつ従士も大活躍、気が付いたら村の近くまで帰ってきていた、あ、お母さんのご飯のいい匂いがするよ、そういえば今日の冒険も楽しかったな、バカ息子も悪くないな、おうちに帰ってお布団はいろ、あー今日もいい一日だった!ちゃんちゃん。

すごく手前勝手な乱暴な解説で申し訳ないのですが、こんな感じの形式なのです。これが、主人公が人妻となったり、あるいは「我、何ゆえに我あり」というような哲学的な概念であったり、はたまた柔らかいそよ風が吹く様子であったりするわけなのです。

 

で、「ソナタ」というとこの「ソナタ形式」が最初に入っている組曲ぽいものをそう呼んでいることが多いです。(時代、作品によりあてはまらないものもあります。)

 

 

で、ここまで「ソナタ」のことを説明しておいて、私が何を言いたいかと言うと、

 

パガニーニさん、あなたの言う「ソナタ」は「ソナタ」としてはおかしいんじゃない、こんなの「ソナタ」って言わないでしょう、だって、最初のメロディに戻らないし、組曲のようにもなってないじゃない!しかも、こんな短いもの他に見たことない。18小節しかないのよ!?『きらきら星』が12小節だってのに、歴史的鬼才の作品がこんなことでいいの!!?

 

そうなんです。

「ソナタ」というには、すごく短かったり、正直「楽器を弾く」という意味以外当てはまらないんじゃないか、と思う。

 

しかも、この人ったら、

それ以外にも「オペラ」の言葉の使い方も変だし、速度を表す言葉もなんか噛み合わない感じするし、雰囲気を表す言葉は細かすぎて伝わらない。うっとりとして、愛情をこめて、夢中になって。これ、それぞれ違う曲なんですけど、似たようなメロディ(失礼!)で、正直これらを弾け分けられる感性も色気も私には備わっていない気がする。

 

こういう変なところが、若いときの作品にはあるようだ。

 

とみーも大学の先生だし、執筆もしているくらいだから、言葉についても詳しいのに、その知識をもってしても「変だよね」としか言いようがない、パガニーニさん。

 

と言っても、楽譜に記載された通りに弾くクラシック音楽家としては、こんな変なの困るのよ!!まるで呪文のようじゃないか!!

 

『パガニーニ・ミーティングス』は、パガニーニのこんな奇妙な人となりもご紹介しながらやってます。お楽しみ頂ければ幸甚でございます。

 

 

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