Notes

『浸』 20200121

最近は忙しくてほとんどやっていないが、昔から弾けない曲のスコアを音源聴きながら分析したり、弾けもしないピアノ曲をさわることが好きだ。

オケの譜面とか。カルテットとか。

ブラームスのカルテットなんてスコア見ているとその緻密さと研ぎ澄まされた緊張感からのゆったりとした音楽の造り込まれた構成に、とても同じ人間の技だとは思えない、と感じる。

モーツァルトは、ピアノ協奏曲なんか案外楽しいのですよ。この人のピアノ協奏曲は、彼における一つのジャンルと化しているので、オケとピアノの具合が素晴らしくバランスが整っていない。単純なソロと伴奏じゃあないからね。そこから生まれる妙というのがこの上なく美しい。

 

そんなふうにしていると時間はあっという間。

 

ただ、でもこうして弾けない曲にふれて、弾けるものは少しでも弾いてみて、そうすると何がしか自分の中にいろんな栄養素が入ってくるかのようで、それはときに疲れる。私はしょっちゅう湯あたりしている。食べてもないのに、いろんな人の成分が入ってくるのだものな。

 

読書もそうだな、少しでも手に取って読もうとしているうちに知らずのうちに私の中には文学が入ってくる、きっと。さしずめ、毎日種類の違う温泉に浸かっているかのようだ、この人生。

 

写真は、習慣にしている里山歩きで見かけた山茶花の瑞々しさに心奪われて。

そんな、今日でした。

『雪』 20200119

昨日は、神田ヴァイオリン娘活動で知り合った方に連れられて、神田の深部に入ってきた。

神田の老舗インドカレー店「葡萄舎」だ。ぶどうしゃ、と書いてぶどうやと読む。

 

そう、カレー屋だ。

 

年季の入った店内の様子。使い込まれた古い木製のカウンターに木のテーブル。壁が薄汚れているのは、煙草のせいか。

間違いなく、一人では入れない店だ。

 

オールバックの髪の毛を後ろで一括りにしたオーナーは、1960年代にヨーロッパからインドを5年間も旅したらしい。音楽を愛し、古い時代のスピーカーから流れる音は店の木と反射し柔らかい。店の雰囲気もその音のようだ。

だって、葡萄舎なんて店の名前なのに、

メインはインドカレーだし、

夜のメニューといえば、しめ鯖、煮凝り、さつま揚げ。

 

もちろん、カレーもあるしベジタリアンも食べにくるという仕上がりは、びっくりするくらい美味しかった(私には)。

 

あと、どれもこれも大盛りたっぷり。

 

古い時代のお話しをうかがったり、神田の様子を教えてもらったり。どれもこれも許される懐の深い音と店。

神田ヴァイオリン娘も少し神田のエキスが入ってきたかも。

 

ここでライブやるときは、お知らせします。

そんな、雪の夜でした。

終演『Paganini Meetings.4』

2020年1月13日。まだ「明けましておめでとうございます」と言いたい気分の今日、我らがオールパガニーニプログラム『Paganini Meetings 4』無事終演しました。お越しのお客様方、ありがとうございました。

 

今回の曲目。順番に

 

ソナタ・コンチェルタータ

カプリス24番(Vn)

ナポレオン

ソナタ3番、27番(Gt)

43の気まぐれより8番(Gt)

バルカバ変奏曲よりムタ3番

チェントーネソナタ4番

 

このうち、かっこで楽器名を記載しているものはそれぞれのソロ。

 

いやぁ、今回のプログラムはきつかった。ナポレオンという曲が、ヴァイオリンのG線一本で弾くために書かれているのですが、それが恐ろしく難しくて。パガニーニのG線だけの曲というと「モーゼ幻想曲」というのが有名なのですが、そっちのほうがずっと簡単に思えた。凄まじく高いハーモニクスがバンバン出てくるんだもの。こんなハーモニクスが存在していただなんて。そんな知らなかったことまで出てくる曲。これは身体にこたえる。

それと以前から取り組んでいるバルカバ変奏曲というのは、超名曲カプリス24番と同じ時期に書かれた、ヴァイオリンとギターの2重奏曲でこれもカプリスのような超絶技巧バンバン。特に今回の3番は難しかった~。

そう、今回は私と富川せんせの間で、とても音楽的とは言えないセリフが飛び交っていた。例えば難しいからって「愚痴は言わない」とか。

 

あとは、

「そこのリズムどうなってるの。え、そんな……不愉快極まりない」

 

不愉快極まりない。

 

音楽に対して出てくるセリフとは思えないね。私の「身体にこたえる」もそうだけど。

 

そのくらい、奇妙で変てこりんで、他の曲ではやらなかったアイディアを詰め込んでいるんだよなぁ。

 

そう、思うとパガニーニも可愛いやつかも。

 

しかし、それにしても今回のこれで、私の左顎下にヴァイオリニスト特有の痣ができたのは明確な事実ですわよ。痣、なかったんだけどな。

 

ちなみに、次回は5月17日のお昼です。だいぶパガニーニを掴んできた我ら。そろそろ決めの演奏をお目見えしましょう。

 

写真は、終演後にとにかくケーキで糖分補給したい私。向かいにはせんせがいた。

20200312 『幻楽夜話』

ーしかし、私はあなたがたに言う。だれでも、情欲をいだいて女を見る者は、心の中ですでに姦淫をしたのである。(マタイによる福音書第5章28)ー

私の持つ『クロイツェル・ソナタ』の冒頭にある文章。物語は早春の汽車の中で始まります。

そう、これはベートーヴェンの『クロイツェル・ソナタ』のことではない。トルストイの『クロイツェル・ソナタ』のことであって、物語はベートーヴェンの『クロイツェル・ソナタ』の音楽と絡み合うように進んでいく、その様子はあの激昂した1楽章、ヴァイオリンとピアノが恐ろしいほど複雑に蛇のようになっているさまを彷彿とさせるようで、このストーリーは、ベートーヴェンの音楽を抜きには語れない。

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『二』 2020.0109

去年から始めたオールパガニーニコンサート『パガニーニ・ミーティングス』も今度で4回目だ。こらえは、元々はギターの富川せんせと何かコンサートやろうと話していたときに、

「最近は、一人の作曲家に絞ってやるものが興味持たれやすいよ」

「え、じゃあパガニーニ?曲やまほどあるしね」

みたいなノリで始めたのだ。それまでは、ピアソラとかサラサーテのスペイン民謡とかギターの古典やってた。だから、正直そこまでパガニーニに愛着があるとか、憧れていたとか、そういう気持ちは私はあまりなかった。ヴァイオリニスト的には、ちゃんと弾けて当たり前の作曲家なんだけどさ、好きとか嫌いとかで言っちゃうとやっぱベートーヴェンは死ぬほど凄いと思うし、ラヴェルなんか永遠の憧れ、砂浜の白ワンピが似合う清楚なお姉さんのような見た事のない憧れ感だよな。

 

が、おかげさまでシリーズとしてひたすらやっていくと、

 

はーっ、やっぱ名人ってすごいわ。

 

とひれ伏したい気分となるね、さすがだわ。歴史に残る人ってすごい。やっぱすごい。どう考えてもすごい。ヴァイオリンってこんなこともできたの、ってたくさん思う。はぅあ~すごいわ。

とか思いながらの今日のリハ。思い起こしてみれば、富川せんせと出会ったのって2年前の今頃か。目黒のバーValseだった。あれから結構な本番やってきたな。去年も一番共演回数が多かったし、人生どこでどう出会えるかわかんないもんだな。

 

写真は、富川せんせとこにあったおもちゃの三味線。これ弾いてもらってげらげら笑ってた私。

そんな、今日でした。

『親』 2020.0105

年末年始は、母と過ごしてきた。

佐賀出身ということを公言している私ですが、実は我が家のルーツは東京から東北、北海道のほうにあり、佐賀というところには父の赴任でお世話になったにすぎない。

その父も亡くなり、親類縁者もいないところにいつまでも母一人でいるのも良くない、と思い、この数年母の東京移住の準備を進めており、この年末にようやく実現となった。

 

何しろ、大学時代に渋谷に住んで以来、東京好きな母である。まだ越してきたばかりで生活は落ち着いていないが、街や人の様子に大変興味関心を抱いており、これからしばらくスマホ片手に自分の街をうろうろ探検しまわることと思う。幸い、ご近所の方々もとても人の好い様子で、それも良かった。スマホの使い方はいくらか教えてきた。

彼女は、一人であれこれ出かけることも大好きで、

佐賀にいたころは、信心深さから佐賀市内から熊本の阿蘇神社まで何度もお参りに出かけていた。片道3時間はかかる距離を車で行くのだ。このたびも、車で上京したいと度々主張していたのだが、東京での運転経験が皆無なため、姉夫婦が止めた。諦めて飛行機で上京、引っ越しに伴い佐賀から車も届いたので、この先喜んで乗り回すことと思う。

 

北海道稚内から東京に大学進学、夫の赴任で身寄りもいない佐賀で半生を過ごし、合間に国の派遣でボストンへ。私が知っている彼女の人生は、半分ほどであるがそういったことを持ち前の室内犬のような冒険好きな性格で前向きに乗り越えてきている。

 

私が、いろいろなことに挑戦できるのは、この血をひいているからだな。あの人、永遠の少女だからな。

 

二人で、冷蔵庫も洗濯機も届いていない新居で彼女お手製のお正月料理を味わい尽くし、「私コンサートでミニスカート履くから衣装縫って」と我儘娘ぶりを発揮、互いの文学話に興じ、クラシック音楽やヴァイオリンにはほとんど興味を示さないが娘の練習だけは邪魔しないため深夜までヴァイオリンもピアノも弾き放題。「何その脚、太いわね~」と言い放つモデル体型の母。私は彼女と外観が全く似ていない。それは驚くほどである。

 

そんな、お正月でした。

オールパガニーニシリーズ 2020年1月13日『Paganini・Meetings4』

『年』 2019.1230

間もなく2019年も終わろうとしている。

つい先日、私はふと今年を振り返る気分となって考えてみた。

 

そういえば、今年は今までと違って新しいことをいろいろと始めたな。

今、皆さんにお見せしているI・T 田中幾子は、今年になってからのもので、それまではこういったことは一切していなかった。

 

オール無伴奏のソロコンサート、ライブハウス、路上、パガニーニシリーズ。今年の後半は、ダンサーや小説家の先生にも知己を得、新しい人間関係も拡がった。

 

1月から渋谷の La.mama でオープニングアクト出演として特別に出して頂いたことは、前例がないらしい。同じように、二子玉川の Gemini Theater や、神田SHOJIMARU にも出して頂いた。最近になってから、ロックのギタリストの方に「そんな話し、聞いたことがないですよ」と、言われた。

3月から駒沢大学エムズカンティーナで始めたソロコンサート『青の時代』。これは、無伴奏でクラシックの名曲からロックまで弾いちゃう、ピアノも弾くし歌も歌う、あまつさえ踊っちゃう、という完全ソロのコンサートで、目玉はお客様にその場でお題を出して頂き、即興でメロディ作って弾くアドリブリクエストかな。

それから、オールパガニーニコンサート『Paganini Meetings』。これは、ヴァイオリニストでギターとパガニーニをやり続ける人がいないから、ギタリスト富川せんせと始めたんだ。ポイントはやり続けるということで、私は彼とすごく気が合うし、弾いていて楽しい。そんなふうに思える仲間は滅多にいないからこんな無謀なこともやろう!と思えたんだ。

 

7月に、神田の海老原商店と出会って、そこでパフォーマンスをされているコンテンポラリーダンサーの青木尚哉さんと彼が率いるグループの皆さんにも、生演奏で踊って頂いたし、9月には作家の津原泰水先生と親しくなれて、先生のライブにゲストで呼んで頂いたり、来年3月12日には先生も交えて文学と音楽をテーマにしたコンサート『幻樂夜話』も開催します。詳細近日公開、少々お待ち下さいませ。当たり前のように書いているけれど、コンテンポラリーで有名な青木さんのダンスはすごい説得力があって誰もを唸らせるし、津原泰水先生の文章は作品ごとに全く違っていて、長年商業作家をされていることの凄さは身に滲みる。

 

そういえば、神田ヴァイオリン娘と称して、神田界隈で路上演奏を始めたのも9月だ。ここからかなり忙しくなっちゃって2月から始めた、この漢字日記の更新頻度も減ったんだ。

11月は、私的今年の総集編『美会夜会』。ピアノとのデュオでできる、最高に格好いい音楽をお届けしたくて。できたかな?どうだろう。

この他、プライベートで演奏したものを入れたらかなりあるなぁ。池袋のジャズクラブ、ホットペッパーでも弾かせてもらったな、あの日は「イパネマの娘」が大好評だったな。ポップスのサポートでヴァイオリンとピアノの両方を担当させてもらったりもしたな。

 

恥ずかしながら、自前の小説を堂々と公開したり。これは来年早々に改訂予定です。改訂したい、要するに書き直したい!もっと面白くいい内容にしたい!あと、曲もレコーディングして聴いてもらいたい!です。

 

来年は、どんな年になるかな。

 

何ができるか、わからないけれど。今の100倍上手くなっていいことや面白いこと素敵なこと満載にできるように、精進して参ります。

 

それもこれも、I・T を楽しんで下さる皆さまのおかげ、もっとこうしたほうがいいんじゃないって助言して下さるおかげ。

 

来年も、どうぞご期待下さいませ。

『弓』 2019.12.29

擦弦楽器の魅力の最たるものは、弓によるものだと思っていて、

ヴァイオリンやチェロに惹かれる人というのは、弓が好きなのだろう、と思っている。

 

そう、擦弦楽器とは、弓で弾く弦楽器の総称です。どうも、擦弦楽器界隈の住民の多くは、弦楽器というとヴァイオリン、ヴィオラ、チェロそしてコントラバスをイメージすることが多いように見受けられるのだが、ギターとしばしば共演していると、会話の端々で弦楽器という言葉を擦弦楽器に置き換えたほうがいいような気がしてくる。

 

弓というのは不思議な道具で、

弓矢の名人のように、この楽器としての弓を巧みに操ることができたらどんなにいいだろう、と小さいころからずっと思っていた。

 

弓の動きは、気持ちがいい。

しなり、楽器を響かせる。空間を音で満たし、人々の心を震わせる。それは、弓だから出る音だろうな。そう思う。

同時に、これは飛び跳ねることだってできるんだ。弦の上を自在に跳ねて、勝手にキラキラした音をいくらでも見せつけてくれる、すごくいい道具だ、不思議だ。なんでそんなことができるんだろう。

 

この最高に気持ちがいい仲間。この最近また様々なところで演奏させてもらったおかげで、私はまた彼と仲良くなった。

 

あぁ、楽しい。楽しいよ。

 

写真は、今日彼と語らったパガニーニの技巧曲。最初から最後までG線で演奏します。

そんな、今日でした。

オールパガニーニシリーズ 2020年1月13日『Paganini・Meetings4』

『食』 2019.1217

食べることが好きなので、放っておくと延々と食べている。

といっても、あまり美食や外食に興味がある人間ではないので、

 

近所のスーパーで特価品を買って、普通のものを作る。

 

ということが、好きだ。

 

最近のお気に入りは、塊肉料理。

牛肩ロースのブロックに塩をまぶし、数日放置。それを鍋で低温調理すれば簡単なローストビーフができあがる。私の場合、無水鍋という多層構造の鍋を使っているので、そうするとノンオイルで10分足らずでできてしまうのだ。

やり方は、

塩した肉を室温に戻す。無水鍋を温めておき、室温に戻った肉をトングで入れ蓋をする。数十秒経ったらひっくり返し、それを繰り返したら放置。7~8分もおいておけば、十分火が入る。

こうして出来上がったローストビーフに、自分で茹でた大豆を潰して作ったフムスを添えて、更に自分で焼いたパンで食すと、めちゃくちゃ楽しくて仕方がない。

 

そう、パンのようなものまで焼くようになったのだ。

 

やり方は簡単。強力粉に少し薄力粉を加え、イースト、砂糖、塩、オリーブオイル、水。混ぜて放置すれば発酵するから、それを好きな分量にちぎって焼くだけ。これは、ピザ生地の配合なのだが、私が目指すのは”家でできる適当料理”なので、これでいいのだ。麵棒で薄めに伸ばせば、クラッカーのようにも使える大変便利な料理。楽しい。

今日は、そば粉を入れてみたら、とても、美味しかった。

 

そんな今日でした。

 

『合』 2019.1216

昨日は、代々木のライブハウスBarbaraで小説家の津原泰水先生のライブにゲスト出演してきた。

「サポート」というものですね。先生がヴォーカル、ギターを演奏なさるので、そこに音楽をより盛り上げられるような動きを添えるのが役目です。

リハーサルは、数日前に一回。

 

30分程度のステージだったのですが、気が付いたら本番ではずいぶん息が合っていたようだなぁ。

 

津原先生は、本業でご多忙なので実際にお目にかかったことは数回しかない。確か、9月に初めて先生の文章講座にお邪魔したときと、講座の受講生の方々交えて中野坂上のビールバーをご紹介頂いたとき、先日の私のコンサート『美会夜会』、あとリハーサル。こう数えたら4回だ。しかも、コンサートや講座のときはそんなに会話できないし、こんなに少ししかご一緒していないということに改めてびっくりしている。

 

ただ、ロック音楽に疎い私にたくさんのことを教えて下さるので、時間が短くとも先生の何かが私の中に入ってきているのかな。そう考えてみると恩師ともそうだと思った。60分レッスンを週に1回受け続ける関係を長年続けると、お会いした時間以上の多くのものを受け取り、強固な師弟関係が築かれるものだ。もしかしたら、それに近いのかもしれない。

そんなわけで、この度もたいそう楽しい本番の時間でありました。カッコいい写真をたくさん頂いたので、今回に限り写真多め。

 

そんな、今日でした。