オリジナル

ふうあーゆー③

「?」

そこに映っていたのは、猫だった。

「??」

 

びっくりして鏡を触ろうとしたら、鏡の猫も同じ動作をする。

 

へ?これ、俺?

改めて自分の身体を見渡すと、確かに毛で覆われている。

足の裏には肉球もある。

なにかしゃべろうとしてみた。口から出たのは「みゃあーん。」

 

え、ちょっと待って、俺ほんとに猫になっちゃったの!慌てて世界を確かめようと玄関から表に飛び出た。ちくしょう、なんでいちいち跳び上がってドアを開けなくちゃいけないんだ、なんなんだ、これは!

 

 

表に出て辺りを見回すと確かにそこはうちの近所のままだった。

普段と何も変わらない。そう、大きさ以外は。

 

いてもたってもいられなくて、そこら近所を走り回った。

なんだ、なんなんだ、何が起こったんだ!気が付いたらうちから人間だったら徒歩20分弱くらいの距離のところまで来ていた。何も状況は良くならないどころか、ただ無駄に疲れただけだ。なんてことだ。。。

 

精神も肉体も疲労困憊して、俺は電柱にもたれかかった。

 

世間は普通なのに、なんで俺だけこんなことになっちまったんだよ。。。はぁ。。。

とため息を漏らすも、それも「みぃ。。。。」と出てきやがる。泣こうにも涙は出てこないし、あぁ、俺は本当に猫になったのかよ。。。
 
 

「どうしたの?」ふと、聞き慣れた声に顔を上げた。

そこには捺美ちゃんがいた。今の俺からみたらビッグサイズの捺美ちゃん、そう、捺美ちゃんだ!びっくりして声に出たのは「みゃおーん!」な、情けない!

 

「なんか、気になるなぁ。捨てられたの?」

 

 捺美ちゃん。君はこの姿の俺にも優しい声をかけてくれるんだね。。。私服も可愛いと思うんだけど、大きすぎて今の俺にはあまり全貌が見えないのが残念だ。。。

「うーん。。。なんか誰かに目が似ているような気がするんだけど。。。」

 俺はただただ情けなくて、目を伏せていた。口から洩れる声は猫の鳴き声だった。

捺美ちゃんが手を伸ばして喉の下を撫でてくる。あぁ、捺美ちゃんの手、指、気持ちいいよ。。。

 

「。。。」

 

捺美ちゃんは、黙ってしばらくただ俺を撫でていた。

ふいに、俺のわきの下から手をくぐらせた。

俺は好きな子に抱っこされてしまった!

「うん、いい子だね。」

 

頬ずりされてしまうと、

そうでもなくてもいい匂いの捺美ちゃんなのに、更に更に甘い匂いでいっぱいになって俺はクラクラしてしまいそうだった。

一旦また降ろされたと思ったら、捺美ちゃんは大きめのリュックからスマホを取り出した。

 

「あ、もしもし啓太くん?今さ、塾の前に寄っていい?猫拾ったの。」

え、俺拾われちゃったの?ていうか、ケイタって誰?親父心配するよなぁ、でもこの姿を見せたらもっと心配するよなぁ。

これは捺美ちゃんに未来を託したほうがいいのかもしれないな。

俺はそう思って、おとなしく再び捺美ちゃんの腕に身を任せることにした。

 

ふうあーゆー②

ふと目覚めたら、俺は椅子の上で丸くなっていた。

「うーん。。。ずいぶん寝ちゃった気がするなぁ。。。」

と伸びようとしたら、なんか、変だ。

なんで、俺は椅子から降りられないんだ?

というか、世界が全て大きくなってしまっているぞ?

あれあれ?テーブルに手が届かない。床も、飛び降りないと降りられない。なんだこれは?

 

オーブンの様子も見えないけど、やたらいい匂いがするな。普段、こんなに強烈な匂いじゃなかったけれど、今日のレシピだとそうなっちゃうのか?そんなはずはないんだが。

よくわからないから、とりあえず椅子から飛び降りてみた。

すとん、と降りられた。

 

「?」

なんだ、この感覚は?

 

降りて少し歩いてみても、世界が大きいことに変わりはない。

おかしいなぁ。俺はまだ夢を見ているのか?

オーブンの様子も気になったけど、ずいぶん高いところにあるからそこまでどうやって行けばいいのかわからない。

困ったなぁ、と思いながら尿意を催した俺はトイレに行くことにした。

トイレに入るにも、ドアノブに手が届かない。勢いつけてジャンプ、ドアノブを両腕で掴みぶら下がったところでグイっと壁を蹴っ飛ばした。

そしてまたすとん、と降りたはいいが、便器が大きすぎて困ってしまった。

仕方なく便座にしがみつきながらなんとか用を足し、手を洗うのもまた先ほどまでと同様に洗面台に跳び上がって。。。とやっていたところで、ふと鏡に映ったものを見た。

 

『始』 2019.0803

小説を書き始めた。

今回公開したのは、1、2週間ほど前に一晩で書き上げたもの。自分としてはいわゆるライトノベルというジャンルに属するような出来ではないか、と思っている。

なぜ、これを書いたのかというと、

 

本来取り掛かるべき私の『雨女』が難航しているから。

 

仕方ない、これまで小説というものをまるで書いたことがないんだもの。そう思って、一旦離れて全く違うものを書いてみよう、と思った。そうしたら20分くらいでテーマと内容がイメージできて、あとは書くだけとなった。

子どもの頃から、創作するときにはこうやって完成図が見えていると楽に簡単にできるんだよな。しかも、いいものができやすい。

 

ただ、最近作曲も取り組むようになってからは、時間をかけて練っていくやり方でも案外いいものを作れるようになってきた。いろんなやり方に慣れていきたいです。

 

で、これのテーマ曲のイメージも半分くらいできあがっているから、細部を仕上げて練習してお披露目できるようにしたいと思っています。

 

パガニーニシリーズやソロコンサートと含めて、いろいろと楽しんで頂ければ幸いである。

そんな、今日でした。

テーマ曲はこちらでお披露目予定。ソロコンサート。ヴァイオリン超絶技巧無伴奏、オリジナル曲、即興演奏など。次回は8月25日エムズカンティーナにて。『青の時代 vol.4』

オールパガニーニプログラムシリーズ『パガニーニ・ミーティングス vol.2』

 

『休』 2019.0801

案外知られていない事実だが、音楽家には耳の休息が必要である。

これは、ほかの分野の方々はどうなのだろう。画家は眼を休めたり、小説家は書物から離れたりするのだろうか。私はよく知らない。

 

プロの音楽家はきっとみなそうなのだと思うのだけれども、音楽を耳にした瞬間に無意識のうちにかなりのことを考えてしまうから、聴覚というより脳が働くんだよね。弾き方、アンサンブル、バランス、テクニックと芸術性、録音物なら録音の仕方、どういう人に向けた音源作成なのか等々。ちょっとしたBGMだってそうなってしまう。

 

で、最近気がついたのは、

山歩きは最高に耳の休息となる、ということ。

 

まず、街中の音が聴こえてこない。アスファルトをこするタイヤの音、電車の音、店屋から流れ出る音楽や宣伝文句、これらがこの首都圏ではアスファルトと更に建築物により互いに反響しあって大音量となっているものが、入ってこない。

 

聴こえるのは、鳥の鳴き声、虫の羽音。蝉の大音量だって山の中ではたいして反響しない。土は音を吸収するのだ。全ては柔らかい音となる。

これは都会に生きる音楽家には必要なことなのではないかな、とも思うようになってきた。

 

というわけで、本日も大変幸せな田中幾子なのです。こういう時間があるから、パガニーニも創作もがんばれる。今夜は、お遊びで書いた小さい小説が思いのほか面白い出来となったから、公開できるように準備しよ。

 

写真は、淹れたいからわざわざこういうのを探して買う、麦茶。

そんな、今日でした。

こちらは田中幾子の音でいっぱいである。ソロコンサート。ヴァイオリン超絶技巧無伴奏、オリジナル曲、即興演奏など。次回は8月25日エムズカンティーナにて。『青の時代 vol.4』

オールパガニーニプログラムシリーズ『パガニーニ・ミーティングス vol.2』

『人』 2019.0730

意外に思われるかもしれないが、実は人見知りな性格なのです。

だから、知らないところに電話をかけることなんか、大の苦手。知っているところでも、しばらくぶりだと何かと理由をつけて後回しにしたがる。

 

じゃあ、演奏活動で知らないところにいきなり出向いてとことん弾いてきちゃうのは、どうなっているのかというと、

これはまた別の神経回路が働いているとしか言いようがない。

 

多くの場合、私の活動を受け入れてくれる方々は、やはり面白いことや新しい試みに興味があってそのための努力を厭わない方が多いから、違う道を歩みながらも同じ方向を向いているような気がする。だから、逆に言うと、少し似た雰囲気の人が多い。そうなると、話しは別だ。アンサンブルの共演も同じだ。

 

で、この数日の私はまたちょっとした人見知りを発症している。

なぜなら、久しぶりに美容院で髪を切りたいから。予約の電話をしないといけないから。うーん。明日こそは電話しよう。

写真は、本日もとあるデビューを果たした様子。スイカバー。

 

そんな、今日でした。

ここに向けての新しいものもご用意中。ソロコンサート。ヴァイオリン超絶技巧無伴奏、オリジナル曲、即興演奏など。次回は8月25日エムズカンティーナにて。『青の時代 vol.4』

オールパガニーニプログラムシリーズ『パガニーニ・ミーティングス vol.2』

 

『魚』 2019.0725

皆さまこんばんは。田中幾子でございます。

 

今日は、朝は山へ行き、午後は新曲の続きと動画撮影、それからパガニーニの練習をして、と大変充実した一日だった。

どのくらい充実していたかというと、それは本日の写真をご覧いただけばおわかりのとおり。

夕食に頂きものの日本酒とほっけの開き。

全ては、ここに集約される。至福でしかない。

 

そういう一日であった。

 

新曲は、ちょっとかっこいいものを書きたいと思い、このところ取り組んでいたものです。出だしのコード進行は、前にギターのとみーが弾いていたタレガという作曲家の作品に使われていたもの。とみーいわく、ムーア人の行進のコード進行らしい。こういうことをさらっと説明できるあたりは、あいつは大学の先生っぽい。

 

ほっけは、私は北海道出身の母をもち佐賀で生まれ育ったから、お魚好きなのです。お魚がないと生きていけない。美味しかった。

 

そんな、今日でした。唐突な終わり方で申し訳ない。

新曲も演奏予定。ソロコンサート。ヴァイオリン超絶技巧無伴奏、オリジナル曲、即興演奏など。次回は8月25日エムズカンティーナにて。『青の時代 vol.4』

オールパガニーニプログラムシリーズ『パガニーニ・ミーティングス vol.2』

『飽』 2019.0720

今日はさほどたいしたことをしていない。なぜなら、また発熱して日の大方を寝て過ごしてしまったから。たいした熱ではないのだが、この長い雨天のせいかと思われるため、容易には治らないのだろう。

とは言え、ずっと寝ていても退屈なので、夜になって起きだして新曲『夜の工場地帯(仮)』の続きをやるなどしていた。

 

作曲も続けていると、自分の癖に気が付いてくる。和音の進行やリズム。なるほど、私は自分の想像力の貧困さからこの和音にいきたくなるのだな、と自分を観察できる。

で、まぁ自分にとってのお馴染みが続くと、元来飽きやすい私は自分に飽きてくるため、なんとか違うことをやろうとして、新たなものが湧いてくるから面白い。

 

創作とは、かくあるべきなのだろうな。私にとっては。

 

そうやって、自分に飽きないようにするということが最大の生きる課題なのかもしれない、と思いながらやはりだるいのでそこそこにして休みます。

 

そんな、今日でした。写真は海老原商店最寄り駅、都営新宿線岩本町駅の階段。ここに通っていたら私も痩せるだろうか。

こういったものはまるで飽きない。ソロコンサートシリーズ。ヴァイオリン超絶技巧無伴奏、オリジナル曲、即興演奏など。次回は8月25日エムズカンティーナにて。『青の時代 vol.4』

オールパガニーニプログラムシリーズ『パガニーニ・ミーティングス vol.2』

『辛』 2019.0716

パガニーニを練習している。今日も彼の作品に向かうことが楽しみだった。

とにかく、ものすごい運動量なのだ。カプリスを弾いているだけで、すごく運動したような気分になる。(実際には決してそんなことはないので、きちんと運動もしないと別の意味ですごい身体になってしまう。)

今度の『パガニーニ・ミーティングス vol.2』では、音楽的な内容と技術的な内容のバランスをうまくとりたいと思っていて、パガニーニはそここそが面白い人物ではないかと推測するがゆえに、その方向での準備をしているわけでありますが、

 

「あ、これは辛味だ。」と、弾きながら思った。

 

私は辛党なんだよな。激辛は苦手だが、辛口が好き。

 

パガニーニを練習したくなるのは、まるで辛いものを欲して口の中で火傷を楽しむようなものなのだ。この、刺激が気持ちいいんだよね。

 

で、そのあとは先日来取りかかっているピアノソロの新曲『夜の工場地帯(仮)』の全体像ができあがってきて、これもなかなか面白い。私の作曲のポイントは「己のピアノ技術で弾けること」でありその最重要課題をクリアすることがなかなか難しいのだけれど、それなりにかっこいい作品になりそうで嬉しい。

 

写真は、今日見かけて思わず買ってしまった桃。雅な香りがするなぁ、君は。

そんな、今日でした。

こっちはこっちで辛味な音楽。ソロコンサートシリーズ「青の時代」ヴァイオリン超絶技巧無伴奏、オリジナル曲、即興演奏など。『青の時代 vol.4』

オールパガニーニプログラムシリーズ『パガニーニ・ミーティングス vol.2』

 

『予』 2019.0630

6月もおしまいですね。

さて、私はこの先の自分の仕事のことを考えている。

 

少し創作活動に集中したいという気持ちがあって、特にこの夏は小説「雨女」と、それとは無関係の作曲に取り組みたいと思っています。

といっても、「青の時代 vol.3」と「パガニーニ・ミーティングス vol.2」はたいそう練習しないといけないプログラムなのでありますが。

 

昨年「虚飾遊戯」というタイトルで尺八豊嶋貞雄くんと、とみーと私、ベース東純二という4人で演奏したのですが、そのときの「朝もやの中へ」という曲がある。その日もやった「バンケット」もそうなのですが、ギターをじゃかじゃかかき鳴らす民族風な曲を書きたいんだな。あと、どすーんと暗い音楽も書いてみたいし、「春ウララ(仮)」はあれからもっとお洒落になったから、そういった雰囲気のものもやりたい。

 

あとは、「雨女」。小説とサウンドトラック音楽というセットで「雨女」ワールドをどうやって皆さまにお届けできるかしら、と思案中でございます。

 

そのあとは、11月と来年3月に私が楽しみなコンサート企画があるので、現在のソロやパガニーニとまた違った面白さを感じて頂きたいとこれも密かに準備中。クラシックとオリジナルを織り交ぜてド派手な音楽にしたいな。

 

ね、いろいろと考えているでしょ?

そんな、今日でした。

その前にこれがある。ソロコンサート 2019 0707「青の時代 vol 3」

コンサート詳細追加情報 お客様感謝祭「青の時代 vol.3