News

『良』 2019.0814

今日は、自前の小説第4話を公開した。結構読まれているようだが、皆さんどうだろうか。楽しんで頂けていると良いのだが。

 

で、今日は来週末にせまったソロコンサート『青の時代 vol.4』の準備に取り掛かっていた。最近パガニーニしか弾いていなかったから、いろいろな音楽が新鮮だ。正確にいうと、ずっと熱であまり練習時間も取れないから『パガニーニ・ミーティングス』が終わるまではそれにかかりきりになっている、という状態であった。

体感的には、バッハもコンチェルトも久しぶり。弾いていてすごく気持ちが良かった。

今度は、このシリーズを始めてから眠らせていたイザイをやろう。バッハと関連付けてやりたい。そんな練習をしていて、ソロコンサートで最近弾いているバッハのフーガもひと月ぶりに取り出すと、また感触が違っていて、楽しかった。

 

きっと、パガニーニに集中して、それから他の作曲家。という巡りがいいんだろうな。やはりヴァイオリニストはパガニーニとバッハのような芸術性の高いものを必ず同時にやるべき、と言われる所以が身をもってわかった気がする。

こうして、また私は音楽とヴァイオリンについて語ることが今宵も増えた。

 

幸せな、良い日。

そんな、今日でした。

 

写真は、春過ぎた山の中で。紫陽花だと思うんですが、いかがでしょう。

ソロコンサートシリーズ「青の時代」ヴァイオリン超絶技巧無伴奏、オリジナル曲、即興演奏など。次回は8月25日エムズカンティーナにて。『青の時代 vol.4』

 

Diary 2019.July

 

 

『万』 20190701

『呟』 20190702

『暗』 20190703

『前』 20190704

『餃』 20190708

『既』 20190709

『語』 20190710

『八』 20190711

『犬』 20190712

『色』 20190713

『悦』 20190714

『茶』 20190715

『辛』 20190716

『前』 20190717

『熱』 20190718

『義』 20190719

『飽』 20190720

『好』 20190721

『力』 20190722

『茸』 20190723

『贅』 20190724

『魚』 20190725

『狂』 20190726

『稀』 20190727

『旬』 20190728

『夏』 20190729

『人』 20190730

『終』 20190731

ふうあーゆー④

「おぉ、ほんとだ、猫だ。」

 

俺たちが着いたのは、どうやらあまり広くない感じの造りのマンションの一室だった。

とにかく、今の俺は身体が小さすぎて全貌が掴めないのだ。

でもどうやらここはワンルームとか、そういう間取りだろう、と思った。ケイタ、と呼ばれた男は俺たちより年上のようだ。

ずいぶん捺美ちゃんと親し気だな。従兄か何かか?

 

「なんか、気になっちゃって。啓太くん、猫飼ってたって言ってたから。それに、うち飼えないし。」

 捺美ちゃんは部屋の床に無造作に置かれた大きめのクッションに座りながら膝の上で俺の背中を撫でている。

「そう、前の花子もいいやつだったんだよなぁ。それにしても、こいつの首輪はなんか変わってるな。」

ケイタは、俺の首元の鈴に手を触れた。あれ?この音、なんか聞いたことがあるぞ?

「なんか、変わった音色だよね。風鈴みたい。」
「そうだな、夏でもないのに風鈴を聴いているみたいだ。不思議だよなぁ、金属に見えるのに。」

「じゃ、名前はふうちゃんにしよっか!」

「風鈴のふう?いいな。よし、お前は今からふうだぞ。と言っても、もしかしたら誰かのペットかもしれないし、拾ったところの住所とこいつの写真撮ってSNSに載せるとかしたほうがいいかもしれないな。あ、あと獣医にも連れてかなきゃ。病気とか怪我してないか診てもらわないと。」
「そうだね!さすが圭太くん!」

 

 それは確かにいい考えだ、このケイタって男は信用できそうだ、と思った瞬間、信じられない出来事が俺の頭上で起こった!

 

「う。。。ん」

 

 なんと、なんとなんとなんと捺美ちゃんがケイタとキスしている!こいつは、俺のライバルだったのか!というか、俺、どうしようもなく負けちゃってるじゃないか!!どうしたらいいんだ!!

 思わず膝の上で頭を抱え込もうとバタバタしてしまい、二人はそれ以上の行為を続けることをやめた。

「なんか、人間味あるなぁ、こいつは。」

 

俺は、あっさりとケイタに抱きかかえられる。

あぁ~、嫌だ、嫌だよ、離せよちくしょう!暴れても一向に自由にならない。

捺美ちゃんがふふっとあの可愛らしい笑顔で笑いかけた。

 

「ふーちゃん、ケイタくんはペットにも優しいし、ここでならまた会えるから、ワガママしないでいい子にしててね。」

 捺美ちゃんに言われちゃあしょうがない。。。俺はあきらめるしかなかった。

 

「じゃあ、私は塾に行くから。獣医さんとか、お金かかるよね?大丈夫?」

「大丈夫大丈夫。そのくらいはバイトで稼いでるから。万一かなりかかりそうだったら友達に相談するよ。獣医学部に行ってる人、知り合いにいるからさ。」
「さっすが名門!私も目指してがんばろーっと!」
「捺美の成績なら大丈夫だよ。」
「うん、あとでまたラインするね。」

 捺美ちゃんは出ていき、俺はケイタと二人きりとなった。

「さて、と。まずお前の写真撮らなきゃなー。この鈴と首輪もよく写るようにしなくっちゃな。黒猫なのはみりゃわかるだろ。」

 

ケイタはクッションに俺を座らせてスマホで何枚も撮影した。

さっきまでの捺美ちゃんのいい匂いがぷんぷん漂ってくる。

俺は感覚も猫になってしまったらしい。捺美ちゃんのいい匂いを感じられることは嬉しいんだが、でも、嬉しくない。
 

 

そこからケイタは知り合いに電話し始めた。

「はい。。。はい。うん、見た目はそんな小さくないのと、元気そうなんですよね。じゃあ、予防接種と、去勢手術くらいですかね?。。。あ、そっかぁ。飼い主がいる場合がありますね。。。わかりました。ありがとうございます。」
 

きょ、去勢手術ぅ!!?そんなことされて俺、人間に戻ったとき大丈夫なのか!!??

 

俺のドギマギが伝わったのか、電話を切ったケイタは人懐っこい笑顔で俺に話しかけた。

「なーんだ、お前も男だから気にしてんのかぁ?大丈夫だよ。とりあえず飼い主さんを見つけるまでは手術はしないさ。首輪してる猫は飼われている可能性が高いらしいからな。3か月はそのまんまだ。」

さ、三ヶ月。。。三ヶ月経ってもこのままだったら、俺、去勢されちゃうってこと!!?まだ、まだなんにもしてないのにぃぃ!!!

「だーいじょぶだって!それより、予防接種は行くぞ。このへんの大きな動物病院調べなきゃな。そこでお前の元の飼い主さんが見つかるかもしれないし。あ、なんか食いたいよな?とりあえず。。。牛乳しかないな。それでいっか?あとで買い物行ってくるから。」

 

 

ふうあーゆー③

「?」

そこに映っていたのは、猫だった。

「??」

 

びっくりして鏡を触ろうとしたら、鏡の猫も同じ動作をする。

 

へ?これ、俺?

改めて自分の身体を見渡すと、確かに毛で覆われている。

足の裏には肉球もある。

なにかしゃべろうとしてみた。口から出たのは「みゃあーん。」

 

え、ちょっと待って、俺ほんとに猫になっちゃったの!慌てて世界を確かめようと玄関から表に飛び出た。ちくしょう、なんでいちいち跳び上がってドアを開けなくちゃいけないんだ、なんなんだ、これは!

 

 

表に出て辺りを見回すと確かにそこはうちの近所のままだった。

普段と何も変わらない。そう、大きさ以外は。

 

いてもたってもいられなくて、そこら近所を走り回った。

なんだ、なんなんだ、何が起こったんだ!気が付いたらうちから人間だったら徒歩20分弱くらいの距離のところまで来ていた。何も状況は良くならないどころか、ただ無駄に疲れただけだ。なんてことだ。。。

 

精神も肉体も疲労困憊して、俺は電柱にもたれかかった。

 

世間は普通なのに、なんで俺だけこんなことになっちまったんだよ。。。はぁ。。。

とため息を漏らすも、それも「みぃ。。。。」と出てきやがる。泣こうにも涙は出てこないし、あぁ、俺は本当に猫になったのかよ。。。
 
 

「どうしたの?」ふと、聞き慣れた声に顔を上げた。

そこには捺美ちゃんがいた。今の俺からみたらビッグサイズの捺美ちゃん、そう、捺美ちゃんだ!びっくりして声に出たのは「みゃおーん!」な、情けない!

 

「なんか、気になるなぁ。捨てられたの?」

 

 捺美ちゃん。君はこの姿の俺にも優しい声をかけてくれるんだね。。。私服も可愛いと思うんだけど、大きすぎて今の俺にはあまり全貌が見えないのが残念だ。。。

「うーん。。。なんか誰かに目が似ているような気がするんだけど。。。」

 俺はただただ情けなくて、目を伏せていた。口から洩れる声は猫の鳴き声だった。

捺美ちゃんが手を伸ばして喉の下を撫でてくる。あぁ、捺美ちゃんの手、指、気持ちいいよ。。。

 

「。。。」

 

捺美ちゃんは、黙ってしばらくただ俺を撫でていた。

ふいに、俺のわきの下から手をくぐらせた。

俺は好きな子に抱っこされてしまった!

「うん、いい子だね。」

 

頬ずりされてしまうと、

そうでもなくてもいい匂いの捺美ちゃんなのに、更に更に甘い匂いでいっぱいになって俺はクラクラしてしまいそうだった。

一旦また降ろされたと思ったら、捺美ちゃんは大きめのリュックからスマホを取り出した。

 

「あ、もしもし啓太くん?今さ、塾の前に寄っていい?猫拾ったの。」

え、俺拾われちゃったの?ていうか、ケイタって誰?親父心配するよなぁ、でもこの姿を見せたらもっと心配するよなぁ。

これは捺美ちゃんに未来を託したほうがいいのかもしれないな。

俺はそう思って、おとなしく再び捺美ちゃんの腕に身を任せることにした。

 

ふうあーゆー②

ふと目覚めたら、俺は椅子の上で丸くなっていた。

「うーん。。。ずいぶん寝ちゃった気がするなぁ。。。」

と伸びようとしたら、なんか、変だ。

なんで、俺は椅子から降りられないんだ?

というか、世界が全て大きくなってしまっているぞ?

あれあれ?テーブルに手が届かない。床も、飛び降りないと降りられない。なんだこれは?

 

オーブンの様子も見えないけど、やたらいい匂いがするな。普段、こんなに強烈な匂いじゃなかったけれど、今日のレシピだとそうなっちゃうのか?そんなはずはないんだが。

よくわからないから、とりあえず椅子から飛び降りてみた。

すとん、と降りられた。

 

「?」

なんだ、この感覚は?

 

降りて少し歩いてみても、世界が大きいことに変わりはない。

おかしいなぁ。俺はまだ夢を見ているのか?

オーブンの様子も気になったけど、ずいぶん高いところにあるからそこまでどうやって行けばいいのかわからない。

困ったなぁ、と思いながら尿意を催した俺はトイレに行くことにした。

トイレに入るにも、ドアノブに手が届かない。勢いつけてジャンプ、ドアノブを両腕で掴みぶら下がったところでグイっと壁を蹴っ飛ばした。

そしてまたすとん、と降りたはいいが、便器が大きすぎて困ってしまった。

仕方なく便座にしがみつきながらなんとか用を足し、手を洗うのもまた先ほどまでと同様に洗面台に跳び上がって。。。とやっていたところで、ふと鏡に映ったものを見た。

 

『凶』 2019.0804 

今日は悪い一日だった。

まず、睡眠中はまた発熱して朝もとても怠かったこと。

そのあともいろんなことがスムーズに運ばず、

「あ、今日は悪い日だ。気を付けて過ごさないと。」

と、思ったものだ。

 

で、日中に出かけたら。出先の最寄り駅で日傘を忘れてしまった。

「あぁ、これは2度と出てこない。」

 

それを覚悟した。

 

数時間後に駅に戻り、改札口で尋ねると「届いていませんねぇ。」との答え。

ただ、まだその場にある可能性があるから自分で確認するように言われ、行ってみると、あった!

「うわぁー、ラッキー!!」

何しろ、今まで傘や手袋を置いてきて見つかったことがなかったからとても嬉しかった。だが、今日という日はまだまだ続く。

 

夜はとみーと『パガニーニ・ミーティングス』のリハーサル。我々は和気あいあいと彼の狂気に慣れ親しんでいった。

 

そして帰宅途中。

 

気が付いたことは、

「あっ!お布団取り込んでない!!」

 

慌てて帰宅して、いの一番に取り込んだ。おかげさまで就寝中以上に湿気を吸っている。

 

そして、そのあと。

 

落ちついて日記を書こうとしたら。

 

インターネットに接続できない。スマホの調子も悪い。あらゆることを試し、それでもうまくいかないこと数十分。

 

ふとした瞬間に回復し、現在に至る。なんなんだ。

 

やはり、今日は悪い日であった。このような深夜にまで油断大敵。このあと就寝予定だが、大丈夫なのであろうか、心配である。きっと今日の運勢は凶に違いない。翻弄されるがままである。

 

写真は、頂きもののもみじ饅頭。美味しかった。

 

そんな、今日でした。

 

演奏は吉と出ますように。ヴァイオリン超絶技巧無伴奏、オリジナル曲、即興演奏など。次回は8月25日エムズカンティーナにて。『青の時代 vol.4』

オールパガニーニプログラムシリーズ『パガニーニ・ミーティングス vol.2』

ふうあーゆー①

俺の名前は横山祐樹。

 

正直俺は顔もかっこいいわけじゃないし、スポーツも勉強も苦手だ。「ゆうき」なんて、きれいな響きの名前に負けちゃってる気がしているけど、亡くなった母さんがつけてくれた名前なんだ。

俺はどこにでもいるような普通の高校生で、一つだけ自慢できることは、料理が得意なことだ。小さい頃に母さんが事故で亡くなってから、親父と俺の二人は急に料理がめきめきと上手くなっていった。というのも、母さんが料理上手だったからなんだな。あの味を食べたいってね。

だから、俺の今の目標は、調理師専門学校に通ってレストランを開くこと。勉強苦手だしさ、そのほうがいいかなって思っている。で、目標とは呼べない夢は、そのとき隣にクラスメイトの捺美ちゃんがいてくれたらな。。。な~んて思っちゃってるのさ!

 

今日も、学校から帰宅して新しいレシピでのお菓子作りに挑戦している。

なんでもドーナツ屋でバイトするくらいドーナツ好きだった捺美ちゃんが最近ダイエットのためにバイトも辞めたらしいんだ。

それで、俺は約束してあげたのよ、俺は捺美ちゃんがそういうことを気にしなくてもいいようなドーナツを作るって。

そうしたら喜んでくれてさ。今、いろいろ考案中なんだ。

とりあえず、揚げないでオーブンで焼くのは決定しているんだが、配合が難しい。美味しく食べるにはある程度砂糖や油分が必要になってくるんだよな。そのへんをなんとかダイエット向けなレシピを考えているところなんだ。

それにしても、捺美ちゃんはなんで急にダイエット始めたんだろ。そんなことしなくたって、今だってすごく可愛いし、勉強だっていつも学年3位には入るしさ。。。でも、俺が詮索して気まずくなるのも嫌だし、とりあえずは彼女に食べてもらえるものを作ることに集中しよう。

 

 生地を型に流し込んでオーブンに入れる。焼き上がりまで待つこの時間がまた楽しみなんだよな。

でも、あぁ。。。なんだか、急に眠くなってきちゃったなぁ。

 

少し寝ようかな。。と、俺はテーブルに突っ伏してうたたねを始めた。

 

猛烈な睡魔に襲われ意識が遠のいていくさなかにどこか遠いところから不思議な鈴の音が聞こえてくる。

 

季節はずれの風鈴のような。。。リーン、リーン。。。

『終』 2019.0731

こんばんは。もう、田中幾子はおしまいです。終わりです。

なぜなら、

 

暑いから。

 

この絶望的な暑さの中、だいぶ生命力も落ちているので、今日は山以外の運動も控え、ひたすらパガニーニを練習していた。

正に、体力の全てを掛けて練習した、と言っていい。

 

とみーと私が弾いている、パガニーニのヴァイオリンとギターのための2重奏曲は、どの曲も、大体おかしい。どこか変である。ゆったりとした曲なんか、メロディはとても美しいのだが、ふとしたところに普通ならいれないようなものが入る。なんか、トラップがあるんだな。美女の罠、とでもいうか。甘い罠ならいいんだが、そうじゃなくていきなり山葵がツーン!という感じ。

まぁでも、日本じゃ演奏されたことのないというそれらを練習していると、カプリスも面白くなってくるし、どんどんイメージがわいてくるからいいのだ。

ですので、8月11日お昼はぜひ駒沢大学駅すぐのエムズカンティーナにお越しください。私たち2人でないとできないものをお聴かせします。

 

そんな、今日でした。写真は、去年の夏に焚いていたお香の箱。

こっちはまだまだ終わらない。ソロコンサートシリーズ「青の時代」ヴァイオリン超絶技巧無伴奏、オリジナル曲、即興演奏など。次回は8月25日エムズカンティーナにて。『青の時代 vol.4』

オールパガニーニプログラムシリーズ『パガニーニ・ミーティングス vol.2』