Notes

『指』 2019.0910

人には得意不得意があって、基本的には得意なことだけをやっているといい、と思う人間である。

例えば、私であったら、

事務作業は、苦手。メール一本送るのにも躊躇したりする。

まぁ、このへんはある程度は自分でしなければならないものであるので、仕方ない、と諦めてもいるのだけれども。

 

演奏に関しては、そうはいかない。

 

指が弱いのだ。

 

握力もない。細い。

じゃあ、何をすべきか。

 

私が出した答えは、

極力、押さえない。というものだ。

 

3の指なんて、しっかり押さえるのは無理だ。全身が硬くなっちまう、それよりも、むしろ甘く押さえて力を抜く。そうするとさ、3の指、私の薬指からは独特の音色が生まれ出てくるのさ。。。

 

それで今日は、ふと思いついて、曲の指使いを大胆に変更することとした。

「普通は、順当に行けばこういう指使いとなるよね。」というのを、

 

出したい音色で全ての指を考える。

 

そうすると、わりと有り得ない運指も生まれるのだが、案外楽に力が抜けた様子で弾けるので、技術的にうまくいきにくいということもなく、思っていた以上にスルスルと弾けるようだ。しかも、より芸術に没頭できる。

 

かの、ハイフェッツはリスクを好むから有り得ない指使いにしていたそうだが、私のは逆だな。

身体がちっちゃくて弱いから、真っ当なことができやしないからなんだよ。

 

というわけで、これから全ての曲の指使いを変えたもので身体に叩き込んでいくこととなった。これはこれで、リスキーかな。

写真は、昨日訪れた日比谷公園。緑の奥には公会堂が。

 

そんな、今日でした。

2019年の集大成!11月24日「かっこいい曲しかやらない」ヴァイオリン・ピアノデュオ『美会夜会』 原宿カーサ・モーツァルトにて。

 

オールパガニーニシリーズ 10月22日『パガニーニ・ミーティングス vol.3』

『図』 20190909

こんばんは。

台風の凄さと、そのあとの今日の暑さにやられてもう何も出てこない田中幾子でございます。

いやぁ。なかなか立派な台風ぶりでしたねぇ、佐賀で生まれ育った私は、台風については一家言あるのですが、

今回は、短時間とはいえ、その強さは佐賀にいた頃を思い出しましたよ。これだけの強い台風は関東地方で体験できるものじゃあない。

と、思うのですが

 

自然災害をこのようにお伝えしても、喜ぶ人は少ないだろうから、話題を移します。

 

うん、今日はね、私は日中の空き時間に図書館に行った。出先と出先の隙間時間ですな、先週の土曜日に津原泰水先生の文章講座にお邪魔して以来、文章熱も高まっている。も、というのは、バレエ熱も高いからだ。

 

本の虫にその出生の由来をもつ私。

 

というと、言いすぎだが、

本については、ヴァイオリンを手にするより早い段階からのめりこんでいたらしい。2歳頃には、英字新聞を逆さにして読んでいたとか。逆さ、というのが2歳児なんですかね。今、思い出したが、音楽については生後2か月頃から母の通う合唱教室で抱っこされたまま私も通っていたらしい。つまり、どっちが先かなんて言えやしない。

 

要するに、本に囲まれているのが幸せだ、ってことですよ。

言いたかったのは、それだけ。

 

そんな、今日でした。

2019年の集大成!11月24日「かっこいい曲しかやらない」ヴァイオリン・ピアノデュオ『美会夜会』 原宿カーサ・モーツァルトにて。

 

オールパガニーニシリーズ 10月22日『パガニーニ・ミーティングス vol.3』

ふうあーゆー⑪

その数日後。

ケイタの忙しさと捺美ちゃんの勉強とが重なって、二人が会うのは2週間ぶりだった。

 

2週間の変化を捺美ちゃんは敏感に感じ取ってるようだった。元々、そういう子なのだ。

 

「捺美。」

 

あのクッションに座った捺美ちゃんをケイタは愛おしそうに見つめた。

 

「ごめん。俺、就活に向かわないといけない。」

「え、、、それって。。。」

「ごめん、捺美。ほんとにごめん。別れてくれ。」

 

あぁ、やっぱりそういうことか。。。

ケイタは優しくていいやつだから、面倒見も良すぎて、俺らはじゃまになっちゃうんだ。。。捺美ちゃん。。。

 

「捺美と付き合い始めた8カ月前は、ここまでだと思ってなかったんだよ。。。正直、甘く見てた。」

「私、待ってる。。。」

 

捺美ちゃんがか細い声で呟いた。

 

「ダメだ。お前はまだ高校2年生だ。捺美が大学に行くころには、またきっと状況が変わっている。俺だって、ビジネス英語がこんなに必須になってきているとは思わなかったよ。こないだも英文添削してもらったんだ。。。状況は、簡単じゃあない。」

「啓太くん。。。」

「捺美、これは真剣な話なんだ。」

「わかるよ。。。啓太くん、最近すごくがんばってる。。。やっぱり、私、足手まといなんだ。。。」

「捺美。」

 

 ケイタは見るからに辛そうだった。なんでこんないいやつがここまで辛い思いしないといけないんだ!

 

「捺美は可愛いし賢いし、捺美みたいないい女の時間は貴重なんだよ。俺で潰しちゃだめだ。時代は変わるし、もっといいやつといい出会いがあるかもしれない。捺美が大学に入ったとき、俺がちゃんと就職できているか約束できない。」

 

それ以上言わせないように捺美ちゃんはケイタの首元に抱きついた。

 

「うん。。。いいよ、啓太くん。。。」

「捺美、今までありがとうな。ふうとの生活も良かったよ。」

 

「もう、言わないで。。。」(第11話終わり)

 

小説『ふうあーゆー』テーマ曲~時空の音色~ 作曲・演奏 Ikuko Tanaka

 

 

『津』 2019.0907

田中幾子のお時間でございます。

 

今日の午後は、作家の津原泰水先生が開講なさっておられる文章講座へとお邪魔してきた。

読売新聞のカルチャースクールなのですが、見学ということもできる。先生ご自身がTwitterでそう呟いておいでだったのです。

 

最近、「音楽と小説で世界観を表したい」と思いながらも、そこは自己流じゃいかんだろ、やはりプロの世界を覗き見なければ!と思っていた矢先に見かけたので、「お、こりゃラッキー♪」とばかりに恵比寿までのこのこと出向いて行ったのだ。

 

実際の先生は、話しぶりも口から出る表現も、

これはTwitterの何十倍も面白い!

 

また、言葉選びのセンスが素敵。

勝手ながら「小説におけるエンターテイメントを実現されていると、こうなるんだ。」

と、思った。

 

いや、格好いいんですよ。

話のまとめ方、伝えないといけないこと、そこに垣間見える輝き。

 

あぁ、これがプロってもんだなぁ。。。

 

短い時間でしたけれども、大変興味深い内容を無料でお聴きしてしまい、挙句の果てには先生や受講生の皆さまとお話しすることもでき、その上小説の世界の面々というのも、音楽とは全く違う雰囲気で恐ろしく楽しい愉快な人物勢ぞろいで、

なんというか、

これぞ、堪能しました。。。という気分なのであります。

 

あ~、がんばろ。いろいろやってこ。やるよ。田中幾子はとことん行ききるぜ!!

 

写真は、お土産に頂いたお菓子。ロシアのよね?

そんな、今日でした。

11月24日「かっこいい曲しかやらない」ヴァイオリン・ピアノデュオ『美会夜会』 原宿カーサ・モーツァルトにて。

 

オールパガニーニシリーズ 10月22日『パガニーニ・ミーティングス vol.3』

『抜』 2019.0905

私は、非常に抜けている女である。

最近、私のことを知った方には驚かれることが多いのだが、

実は、いわゆる「天然ボケ」なのだと昔から言われている。

 

そうだなぁ、肌着の裏表を間違えたままだったり

事務的なことはとてつもなく苦手だったり

少しでも、興味を感じられない物事については、一切覚えられないし

 

だから、はっきり言って、芸術以外のことは全くできない。

 

この日記を毎日続けているではないですか、と言われそうですけれども、

 

ほら、文章を考えることはさ、楽しいから。

 

毎日通勤電車に乗って同じ時間に会社に通う、ということは絶対にできないな、と悟った高校時代は、私は遅刻せずに登校できた日数は全登校日のうちの1割にも満たないのではないだろうか。

別に、遅刻したいとか、敢えて遅れようとか、

そんなつもりは毛頭ない。

 

そう、正に毛ほども思ってやしないのだ。

 

なのに、なにゆえ私は遅刻する?微妙な3分や5分。あの頃は、遅刻で後ろに立たされて、立ったまま寝ちゃってたなぁ。あれ、辛いんだよな、足がガクッてなる度に目が覚めるし、罰として立たされてるのに寝ちゃって更に先生の怒りを買うし。好きで寝るわけじゃないんだよ、要は退屈なんだよ。あ、先生すみません。

 

ま、そのぶん芸術につぎ込んでると思って頂ければ幸甚でございます。

写真は、ニコライ堂に行ったときの帰り、神保町のさぼうる2でゾウさんと撮った自撮り。母が仕立てた手縫いのワンピース。

そんな、今日でした。

秘話

この夏、初めて自分の小説というものを世間に向けて発表した。

『ふうあーゆー』というタイトルで、男子高校生が主人公の、現代ファンタジーだ。

 

現在も連載中で、この文章を書いている本日も、続きを公開したばかりなのだが、

 

実は、これはもう全て出来上がっている。

 

泣いても笑っても、この先の展開とラストは想像主たる私の意思決定の通り、というわけであります。

 

で、私は、

これを書くに至った背景をいうのを、かいつまんでお話ししたい。

 

何しろ、こういったエッセイというようなものは無数に生み出せるタイプではありますが、実は小説は全く書いたことがない。

では、なぜ書くのか。

 

実は、昨年11月頃から取り掛かっている『雨女』という小説がある。そのサウンドトラックとなる音楽は出来上がっているのに、肝心のお話しができあがらない。テーマ曲とサントラになる曲もyoutubeに発表している。

 

こんなに難しいのであれば、少しこれから離れて違うものを書いてみよう。

内容は、どうしようか。明るいものがいいな、短くて。あぁ、ファンタジーにしよう、それで全部決まる、うん決まった!

 

今年の7月くらいかな?お風呂で入浴しながら20分くらいで考えた内容で、その日の夜には全部書き上げてしまった。気持ちが良かった。

 

この世界のイメージで曲を書く。

 

曲の最初のメロディはすぐに決まった。だって、この話を表す雰囲気はこれしかないもの。

 

大切にしたいもの。誰の心にもあるもの。

手の中でそっと感じていたいもの。

そんな感じを最初のメロディで表したつもりだ。

 

中間部は少し迷った。

 

でも、誰しも人生は冒険と挑戦。ダイナミックなはずだ。

 

そう思って、ダイナミックな動きを入れた。元より、好きな進行だ。

 

大切にしたい、

 

そんな気持ちを大事に扱ったつもりの作品だ。

 

私の悪い癖で、

音楽を聴いてもらえば、全て伝わる。

 

そう、思ってしまう。

 

具体的にご説明すると、

出だしのメロディは

誰しも心の奥底に抱いているであろう、ひっそりとした思い出。あまり人には見せないもの。

中間部は、その人が生きる道筋、受験や引っ越し、人との出会いと別れ、いいことも悪いことも起こるけれども、前向きに生きる様子

また戻ってきた最初のメロディは、中間部を受けている、でも本来のあなたがいるよ。

youtubeは短めでここで終わっているが、本当はもう少しだけ長い。

 

 

小説と音楽の一体。

未熟ですが、少しでも楽しんで頂ければ幸いです。

 

テーマ曲はこちら

ふうあーゆー⑩

ケイタの様子が少しずつ変わってきたのはその一か月ほどあとだった。

 

パソコンに向かう時間が長くなり、電話もよくする。

そして一日中ブツブツ英文を口にしている。

 

相変わらず俺の世話は丁寧にやってくれるし、それは俺もありがたいのだが、見ていると、

俺はいつまでもここにいるべきではないのでは。そう思った。

 

 

「え、見てもらえるんですか?ありがとうございます!」

 

ケイタは電話を切ると、最低限の俺の衣食住を整えて部屋を飛び出していった。

帰宅したのは深夜になってからだった。

 

「ふう。。。俺、お前たちに、、、。」

 

疲れた顔のケイタは何かを話そうとして、でも途中でやめてしまった。お前たちって、捺美ちゃんと俺のことか?

 

「捺美に返信しないとな。この汚い部屋に入れる自信がないよ。」

 

最近の忙しさでケイタは部屋の掃除はおろか、洗濯も洗い物も溜まりがちだった。

捺美ちゃんが来る数時間前に慌てて表面だけ片づける、俺はそれをよく知っていた。

仕方ない、ケイタはそれだけ勉強も忙しいのだから。

 

「あぁ~。。。困ったなぁ。。。このままじゃあダメだ。。。」

 

そんな弱音を吐くのは、俺が来てからは初めてだった。

 

なんでだ?お前はすごくがんばっているじゃないか。

勉強があるからって、酒もほとんど飲まない。

それに俺の世話は焼きすぎるほど、焼いてくれる。

 

 

「でも、確実な就職を勝ち取るには、やんないと。」

 

 

俺を抱き寄せながら語る低い声は、信じられないほど男らしかった。(第10話終わり)

 

 

小説『ふうあーゆー』テーマ曲~時空の音色~ 作曲・演奏 田中幾子

 

 

 

 

『溜』 2019.0904

このところの関東地方は、どうも天候が不順である。

実は、天候や気圧の変化に弱いほうであるので、

 

この夏の猛暑では連日発熱してしまっていたし、

それで体力が消耗してしまったのか、最近の低気圧でまた発熱してしまうようになってしまった。

 

そうならないよう、身体を鍛えるためにこの春から山歩きを始めたのですが、これだけの気候の変化にはまだ追いつかないようなのです。

とは言いつつも、予定は大量にあり、

 

先週末も、面白いことやったんだよなぁ、これはもう少ししたらお届けできると思うんだけど。

あと、この秋冬への準備も始めている。あるものは、個人的にはとても大きな試みで、いかに格好良く創れるか、イメージを形にできるか、初めてのことだけれども、がんばりたい。

 

まだ熱が下がらないので、いまいち気分が上がらないのですが、

最近の忙しさで疲れが溜まってしまっていたんだな!と、思うことにして、

明日からまた生き返ろうと思います。

 

あと、最近の私は毎日数分でも動画を見ながらバレエの練習を始めました。楽しくて仕方がない。

 

写真は、昨日のニコライ堂の帰りに寄った、これぞ昭和な喫茶店「さぼうる2」のミートソース。塩がつくのが、また昭和を醸し出していますね。

 

そんな、今日でした。

『露』 2019.0903

今日は、御茶ノ水にあるニコライ堂へと出かけてきた。

と、いうのは

 

友人の日本正教会の水野神父が、来月から九州へと異動することになり、

当面彼にお会いすることはできないだろう、というのと、

 

彼は、大変愉快な人柄で、東方正教会についての電子書籍を出版するほど、正教会を知ってもらうための活動に熱心で、説明も大変お上手であるので、

彼がこちらにいる間に、ニコライ堂の案内をしてもらいたい、と思ったからである。

 

ちなみに、正教会とはキリスト教の一つで、ギリシャに始まった初代教会の信仰を正しくそのまま継承してきた唯一の教会なのだそうです。

日本正教会とは、ロシアのニコライ・カサートキンが1861年函館のロシア領事館付属聖堂の司祭として来日し教えを広めたところからスタートしたらしい。なので、ロシア正教会という言い方もするのだと思う。

 

実際の建物は、拝観料300円を支払って入館するのですが、

建物の屋根の部分は関東大震災で崩れた、とか

数多くある宗教絵画をイコンと呼び、聖書の場面を表していて描かれた時代や国によって画風が変わることや

ロシアでは、色を大事にする。聖母マリアの色はブルーとされていて、今回はたまたまマリアの式典があったあとだから、聖堂内がブルーで飾られていることや

イコンの飾り方のルール、

音楽の用い方、プロテスタントやカトリックとの違い

建築の形における各国の特徴

ろうそくや方角、光の意味合い

 

等々、たっぷりお話しを伺って、もう今日のその内容だけでエッセイが一本書けそうな具合である。

 

さすが、出版もされているだけあって、説明の奥深さもとても興味深かったし、

 

日本人イコン画家の女性、山下りんについてのお話しも、すごい内容だった。いやぁ、明治の時代に仕事を成し遂げた人というのは、気合の入り方が違う。チャイコフスキーが生きていた時代に女性単身でロシアに渡るんだもんな。この人のことは、今小説が連載されているらしい。そりゃあそうだ、だって大変ドラマティックだもの。

 

と、何もかもが非常に楽しかったニコライ堂でしたが、

個人的に一番印象深かったのは、

 

聖堂内の、いい香り。

 

なんでも、祭礼のときにお香を立てるらしい。司教さんが香をふりながら歩く、というふうにおっしゃっていた。

 

うーん、面白い。

 

たっぷり2時間お話しを伺って、帰りは神保町の「さぼうる2」で休憩して帰った。

そんな、今日でした。

『友』 2019.0902

毎日、山に行ったり、練習したり創作したり、という日々であるので、

いわゆるキラキラしていそうな、要するに”インスタ映え”するようなことはほとんど私の日常にない。

 

例えば、女子会というようなものも行ったことがないし、

仕事以外で友達と会う、ということがほとんどない。

 

なぜかというと、

 

私が思う友人とは、

 

一緒に音楽の舞台で芸術を緊張と愛情を抱きながら表現し合える仲間

 

という感じだから。

もちろん、音楽家でない友人という人とだったら、そんなことはないのですが。

 

でも、この一瞬を共に創り上げられる友人というのは、最高の友達だよな、と心から思うのです。

 

で、そういう人はいつも忙しいし、一番の会話は、やはり一緒に弾くこと。

 

だから、なかなかそれ以外では会わないんだよなぁ、たまに近況報告もするけどさ。やっぱ、音で確認し合いたいよね、だって、その曲への気持ちもやりたい事も、感性も何もかもそこで思い合えるもの!

 

だから、私が大事に思う友達ともっと仲良くなれるように、

そういう本番の機会を増やせるように、がんばろう、と思うのであります。

 

写真は、久しぶりに見つけたちょうど2年前の私。この日は、ブラックドレスを着て演奏して、ブラックスワンと呼ばれたのだった。

 

そんな、今日でした。